「元リク」が日本サッカーを史上最強にした理由 人材輩出企業「リクルート」強さの秘密【前編】
「元リクに任せれば間違いない」
日本のスタートアップ界隈で人材を探すとき、多くの人がこう口にする。
「元リク」とは「リクルート出身者」。『起業の天才!』江副浩正氏が1960年に立ち上げたリクルートは、「リクルート事件」で同氏が去った後も力強く成長を続け、今や株式時価総額17兆9007億円(2025年1月28日時点)。日本で4番目に価値のある会社になった。
それだけでも奇跡だが、さらにリクルートは現代日本のスタートアップやIT、ネット企業に人材を供給する、稀有な人材輩出企業にもなっている。
「元リク」はなぜ仕事が「できる」のか。斯界で活躍する彼ら、彼女らは、リクルートでどう育てられ、何を学び、その後のキャリアでそれをどう生かしているのか。前編では2014年から4期8年、Jリーグチェアマンを務め、その間にJリーグの収益を2倍にした村井満氏を紹介する。
プロサッカーの経験なしで「Jリーグチェアマン」に
村井氏は現在、日本バドミントン協会の会長を務めている。Jリーグでの実績を買われ、不祥事が続いた同協会の立て直しを託されている。
その経営手腕は折り紙つきだが、久しぶりに村井氏の個人オフィスを訪ねると「いや、バドミントンもなかなか大変ですよ」と苦笑いした。
Jリーグチェアマンとしての歩みも平坦ではなかった。初代の川淵三郎氏を筆頭に、歴代Jリーグチェアマンは日本代表やプロ選手や球団経営者などとして輝かしい経歴を持つ人々が務めてきた。一方、村井氏のサッカー経験は高校のサッカー部で止まっている。
「プロサッカーの経験もない人間にチェアマンが務まるのか」
そんな周囲の不安をよそに、村井氏は「経営者」の目線でJリーグを「稼げる組織」に変えていく。Jリーグの収益を2倍にし、Jリーグ加盟クラブの収益も868億円から1240億円に伸ばし、懐を潤わせた。
高収益な組織となった日本のサッカーは、選手層も厚くなり、2022年のワールドカップでは強豪国のドイツとスペインを撃破して、決勝トーナメントに駒を進めたのは記憶に新しい。
8年で収益を2倍以上に増やした背景には、古巣のリクルートに江副時代から脈々と流れる「ファクトとロジック」、「財務諸表と経営戦略」の系譜があった。
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