一流ビジネスマンが企業不正に「墜ちる」理由 東芝の不正会計事件を他山の石とせよ
――東芝の不正会計には、非常に多くの役職員がかかわっていました。
日本のサラリーマン、ビジネスマンの倫理性は非常に高い。それは東芝の社員も同じだったはず。一流の大学を出て、一流の企業に入った人間が、不正をやろうなんて普通は思わない。
じゃあ、なぜ、東芝でこんな組織的な不正会計が続いたのか。私は日本の会社組織の特徴が悪い方向に働いてしまったのだと思います。上司が何を考えているか、それを忖度(そんたく)して行動する習慣が日本のビジネスマンには染みついている。だから、経営者の倫理観が崩れていれば、その組織が不正に走る可能性が非常に高くなる。しかも、日本の会社組織には多様性があまりないから、「こんな会計処理をやったらまずいだろう」と感じてはいても、異議を唱える人間がなかなか出てこない。
――今回のような不正会計を起こさないためには、何が必要ですか。
第一に、見識が豊富で独立した社外取締役を複数招いて、ガバナンスが健全に機能する仕組みをつくる。そうやって監督機能が働く体制の下で、マネジメント能力と高い倫理観を併せ持った最適な人材をトップとして広く社外を含めて選ぶべきだ。
東芝の事例が示すように、倫理観を欠いた人間がトップに立てば、いくら一流企業でも組織的な不正が起こりうる。内部統制にしても、経営者の倫理観がダメだったら、これは完全に失敗する。
モニタリングや、報告を上げる仕組みを整備する
もし私が社外取締役だったら、モニタリングするための道具を作る。内部監査部がCEOではなく、(独立した社外取締役で構成する)監査委員会にも報告を上げる仕組みをつくる。また、内部通報の報告が監査委員会に上がってくる仕組みにする。
日本の内部監査部はたいがいトップやCFO(最高財務責任者)にぶら下がる形になっており、内部通報もトップが関与する不正は握りつぶされる。監査委員会にすべての情報が上がってくる仕組みにしない限り、トップが主導する不正は発見できない。
――企業のトップや企業で働く人間は、東芝の事例から何を学ぶべきでしょうか。
事業がグローバル化した現代、企業はマーケットでも人材でも多様性を受け入れることによって企業価値を高めることになる。そんな中で、不正会計だけでなく、企業集団の不正リスクは高まるばかり。不正はわが社のグループのどこかでも起こりうるのだと考えて、まずは企業不正について学び、そして不正が小さいうちに早期発見し自浄能力を発揮できるように備えるべきだ。
他社の事件を研究することによって、高等教育を受けた一流のビジネスマンが手を染めた企業不正(ホワイトカラー犯罪)の決断は簡単なものではなかったことが学べるはずだ。
(撮影:今井 康一)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら