NYタイムズ選定「行くべき場所」山口市の魅力とは 「レコードB面」「控えめな天才性」と評価のワケ
「山口市には大きな会社がないから雇用も多くない。でも、個人が起業するにはブルーオーシャン。不動産が安いし、例えばレストランなら食材も安く調達できる。約19万人の人口があるので商売が成立できる規模です。面白い人同士が繋がりやすいのもいい。アーティスト同士でも大都会だとグループが分かれてしまうものだけど、山口市の規模だったら全員と知り合いになれて発想が広がりやすい。地域のキーパーソンにも繋がりやすいですよ。知り合いを辿っていくとたいていどこかで繋がるものです」
歴史、アート、食、自分なりの発見ができるのが魅力
観光地としては、「山口市は車がないと移動が難しく、都会の友人にはなかなか滞在を提案できない。秋吉台、錦帯橋といった有名スポットもないので、素通りされないような工夫がもう一段必要かも」とガイド経験のある粉川さんは辛口だ。一方で「食べ物が美味しい」「文化度が高くて面白い人が多い」「病院や買い物にも困らない」と住み心地を絶賛してくれた。
地元で育った丸本さんにも山口市の魅力を聞いてみると、「山根さん夫妻や粉川さんが言うように、山口市民には移住者や観光客に親しくできる気質があると思います。海に開かれた立地で、室町時代から大内氏が交易を育んできた歴史が私たちを育ててくれたんでしょうね」と笑う。
国宝 瑠璃光寺五重塔(2026年3月まで改修中の予定だが、時期は変更の可能性あり)、一の坂川のホタル、湯田温泉、山口情報芸術センター、知ると訪れたくなるスポットも多いが、山口市が9月に発表したインバウンドの宿泊数※は期待ほど伸びていなかった。
「昨年比約1.4倍とはいえ、元の総数が少ないのでニューヨークタイムズのニュースの影響はまださほどでもなさそうです。大観光地ではないため宿泊施設も限られていますし」(丸本さん)
だからこそ、日々の暮らしやすさが移住者には魅力となる。歴史と文化に裏打ちされてゆとりがあり、食べ物が美味しいならこれ以上はない。温かい地元のサポートもある。とくに、「移住者や観光客を違和感なく受け入れられる気質」(丸本さん)や「繋がりたい人と繋がりやすい街の規模」(粉川さん)といった特徴は移住してからのチャレンジに追い風となりそうだ。
山口市はただ旅するだけじゃもったいない、むしろ暮らしたい街だった。
※湯田温泉旅館協同組合加盟ホテル・旅館におけるインバウンド宿泊人員
2023年1月~7月6259人
2024年1月~7月8743人
取材・文/池上香夜子
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