NYタイムズ選定「行くべき場所」山口市の魅力とは 「レコードB面」「控えめな天才性」と評価のワケ

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粉川さんが山口市でレストランを開業するまでの経緯がユニーク。

出身地は神戸で、大学卒業後は製薬会社でMRを務めていた。30歳を前にイタリアへ渡航して料理ライターを目指し、レストランなどで修業、その後食に関するライターや通訳、ガイドを生業としてきた。

11年ほどイタリアで過ごす間にアーティストのロベルト・ピビリさんと出会い結婚。

「しばらくしてロベルトが日本に移住したいと言い出したんです。自分の仕事は順調だったので悩みましたが、日本の新たな土地へ、一緒に冒険の旅に出ることに決めたんです」

ホタルを入れて光を楽しむ虫かごづくり

ロベルトさんの故郷はイタリアの地方都市。

「大都市はきっと向かないし、自分のキャリアを活かすなら埋もれた魅力を引き出して紹介することが仕事になる、ローカルエリアがいいという直感がありました」と妙さん。

山口市に移住したのは「たまたまそのときに地域おこし協力隊員を募集していたから、です」(粉川さん)

2016年の地域おこし協力隊に採用されて帰国し、任命されたミッションは歴史的建造物が残る大殿エリアの交流人口拡大だった。

粉川さんが着目したのはホタルを入れて光を楽しむ虫かごづくり。山口市中心部、大殿エリアを流れる一の坂川はゲンジボタルの名所で5月下旬から6月上旬のひとときホタルが乱舞する。農村エリアの工房を訪ね、製作を教わることから始まった。

ホタルかご
かつてはホタルを閉じ込めて光を楽しんだホタルかご。いまは天然記念物であるホタルは入れずにインテリアとしての風情を楽しむ(写真撮影/内田伸一郎)
超民家やまね室内ホタルかご
超民家やまねの室内でもホタルかごが飾られていた(写真撮影/内田伸一郎)

粉川さんはホタルかごのつくり方を地元の方に学び、協力を得て、ホタルかごをホタル観賞時期に店舗や住宅の軒先に飾るプロジェクトを企画。地域おこし協力隊を卒業してからは、設立した任意団体「つむぎラボ」に企画を引き継ぎ、今やホタルかごは大殿エリアの初夏の風物詩になりつつある。

ゆめ工房
粉川さんたちがホタルかごのつくり方を学んだのは、昭和期に老人生きがい対象モデル地域として県の指定を受けたことから始まった、山口市内の田園地帯にある「ゆめ工房」。(写真左の建物)。工房のメンバーは工芸品の製作・販売だけではなくハイキングコースの整備を主導するなど、地域ならではの魅力を守り育てている場所だ(写真撮影/内田伸一郎)
ホタルかご作り
ホタルかごの材料は麦わら。ホタルかごに適した真っすぐで固い麦わらの選別と加工もゆめ工房で行っている。ホタルかご・しめ縄・竹とんぼづくりなどを体験できる(要予約)。海外観光客からも好評だ(写真撮影/内田伸一郎)
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