「102歳の薬剤師」今も"週6勤務"を続ける深い理由 夫の事業失敗、30歳で開業…予定外でも幸せな人生

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漢方に強い薬局として、全国から注文がくるという安全薬局。99歳となった2022年7月には、「世界最高齢の現役薬剤師」としてギネスブックにも認定された(2024年には101歳で記録更新)。

二人三脚で切り盛りしてきた夫は16年前に亡くなった。店で倒れ、すぐに病院に搬送されたが意識が戻ることはなく、息を引き取った。

幡本さんに言わせると、「ポコッと死んじゃった」。そして、「苦しむことなく静かに逝けたことがよかった」とも。

生前の夫とよく話していたことをしみじみ考える。自分たちは“商人”じゃなくて“職人”だねということ。薬局を開業するとき、友人にそう言われたという。

漢方
調剤した漢方は、1つひとつ丁寧に手作業で袋詰めしていく(東洋経済オンライン編集部撮影)

人は天から与えられたものでやっていく

長寿の金言連載
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「私たちは目の前のことをしっかりやっていこうって、それだけで続けてきました。

自分が選択したことでうまくいかないことがあっても、そのときによく考えて自分で決めたこと。後悔するのではなく、そこからどうしたらいいのか考えたほうがいいと思うんです

成功の秘訣というような話もたくさん世の中に出ていますが、私はやっぱり、人は天から与えられたものでやっていく、そういうものだと思います」

30歳から始まった仕事人生は、悩みも苦しいことも多々あった。それでも102歳になる今も現役で仕事を続けている喜びのほうが勝るという。

どんな仕事でも生きている限り仕事があって、誰かの役に立っていると思えれば、幸せな人生。

人生において、職業に貴賎はないし、立場の上下も関係ない。自分が生きていることに誇りを持ちましょう」と幡本さんは言う。

「つねに自分自身を高めていきたい。そのためにどう生きていくかを考えたいの」

そして、「薬剤師は私の天職です」と幡本さんは胸を張った。

安全薬局
「古い道具が多いから、珍しいものばかりでしょ?」と笑う幡本さん(東洋経済オンライン編集部撮影)
【写真を見る】築72年! 102歳の幡本さんが切り盛りする“超レトロ”な「安全薬局」(11枚)
桜井 美貴子 ライター・編集者

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さくらい みきこ / Mikiko Sakurai

1965年生まれ。秋田県出身。出版社勤務の後、フリーランスの編集・ライターとして独立。医療、カネ、性などさまざまなテーマで取材、執筆を続けている。生活実用をはじめとした書籍の企画編集、人物インタビューなど、硬軟の現場を渡り歩く。

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