「ヤルタ会談2.0」で戦勝演出狙うプーチンの思惑 トランプvsプーチン第2ラウンドはどうなるか

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プーチン氏にとって、トランプ氏と共鳴できる材料はほかにも浮上している。性を巡るトランプ氏の保守的姿勢だ。トランプ氏は、就任初日に「連邦政府が認める性別は男性と女性だけだ」とする大統領令にも署名した。

プーチン氏も従来から性に関しては保守的姿勢を強く打ち出している。同性婚を認めない立場から「私が大統領である間は、両親には(同性の)親1号、親2号ではなく、パパとママがなるものだ」というのが決まり文句だ。

このような点を取っ掛かりにして、プーチン氏は「ヤルタ2.0」実現へトランプ氏を誘い込みたいところだろう。

1期目と変化したトランプ氏

ただ、プーチン氏との首脳外交に対してトランプ氏は、1期目とは大きく異なる、まるで別人のような指導者になるともみられている。それは、1期目のトランプ氏はプーチン氏に対し、奇妙なほど融和的だったからだ。

これを象徴したのが、2018年7月のヘルシンキでの米ロ首脳会談だ。2016年のアメリカ大統領選でロシアがニセ情報などで介入したと主張するアメリカの情報機関の結論より、介入を否定したプーチン氏の方を信じると発言し、アメリカはもちろん世界をも驚かせた。

だが今回、民主党のハリス候補に完勝した2期目のトランプ氏は、1期目と比べ物にならないほど強い政治的権威を獲得した。就任演説でもこれを誇示した。

一方のプーチン氏はシリアのアサド政権崩壊やアルメニアの離反など、かつてないほど指導者としての存在感や影響力が低下している。両指導者の現状は極めて対照的だ。

ウクライナでの和平をめぐって、トランプ氏は「力による平和」というかつてのレーガン大統領(在任期間1981~1989年)の外交路線を踏襲しようとしている。就任演説でも国防力の強化を表明した。

ウクライナのゼレンスキー政権は、欧州軍の駐留など十分な安全保障策を条件に停戦交渉を受け入れることを表明している。プーチン氏に対しては、トランプ氏は融和的立場というよりは軍事力を背景にした「力の立場」から戦闘停止交渉開始受け入れを呼び掛ける可能性が高いと筆者はみる。

トランプ氏は2025年1月21日、さっそく「力の立場」から交渉の受け入れをプーチン氏に迫った。プーチン氏が停戦交渉に応じなければ、ロシアに制裁を科す可能性があるとホワイトハウスで記者団に語ったのだ。プーチン氏は、トランプ氏の変貌ぶりを実感したに違いない。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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