しかし、トランプ氏の調停工作を真っ向から拒否することはしないとみられる。このため、停戦交渉開始に向けトランプ氏から、なるべく多くの譲歩を引き出すことを狙っているだろう。
おまけに2025年はロシアの最大の祝日である5月9日の対ドイツ戦勝記念日が80周年という節目を迎える。2024年秋以降、ロシア軍が猛攻を掛けている東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク2州)の完全制圧も現時点で達成できていない中、プーチン氏にとっては「ヤルタ2.0」的な外交成果が必要なのだ。
さらにプーチン氏は「ヤルタ2.0」的な会談を開催できる場合、停戦協議からウクライナを排除して米ロのみで首脳会談を開くことを狙っているという。「戦勝国」による首脳会談と位置付けたいからだ。
グリーンランドも取り引き材料に?
一方で、早期停戦の実現を急ぐトランプ氏は、本音では「ノーベル平和賞の受賞が和平仲介の狙い」と言われている。ロシアを「戦勝国」と位置付けることになる「ヤルタ2.0」方式に同意する可能性は低いと筆者は見るが、仲介の成果を急ぐあまり、同意する可能性もゼロとは言えないだろう。
プーチン氏にすれば、トランプ氏がグリーンランドの領有権やパナマ運河の管轄権をめぐって小国の立場を無視する強引な「新帝国主義的」発言をしていることも、トランプ氏との間で共鳴できる材料が生まれたと好感を持っているのは間違いないだろう。
とくにグリーンランドに関しては、ロシアがこれまで「北極海はロシアのもの」と主張して海底に国旗を立てるなど、独占的開発を目指していた時期があった。その後、中国も進出し、ロシアとは競争的な協力関係にある。
北極海沿岸でもあるグリーンランドの領有権がアメリカに渡ることはロシアの権益に対する打撃にはなるだろう。しかし、ウクライナとの関係で何らかの取引材料になると前向きに踏んでいる可能性もある。
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