「フジCM差し替え」を"英断"と称える人への違和感 企業がCMを差し替える真の狙いは"制裁"ではない
それでも差し替えを行うのは、「フジテレビでCM放映をするのはイメージ低下につながる」と判断したからだろう。広告出稿を行う目的はさまざまだが、「企業や商品のイメージをよくするため」という点は共通している。
「逆効果を生むのであれば、CMを差し替える」という判断は、経済合理性という点でも妥当性はある。実際、記者会見によって、フジテレビに対する批判は収まるどころか、むしろ強まっているからだ。
もう1つ重要なのが、先に挙げた2つ目のコンプライアンスの視点だ。現時点でCM差し替えを行っているのは、トヨタ自動車、日本生命といった、コンプライアンスを重視するグローバル大手企業である。加えて、企業がコンプラインスを重視する流れは世界的に加速している。
特に、性加害やエンタメ業界の不祥事に対しては、ジャニー喜多川さんの性加害問題、宝塚歌劇団のいじめ問題、松本人志さんの性加害疑惑を経て、より厳しい目が注がれるようになってきている。
ジャニーズ問題が顕在化する前に、このたびのフジテレビの問題が起きていたとしたら、今回のCM差し替えのような現象は起きていなかったに違いない。この1年半の間で、状況は大きく変わったのだ。筆者自身、この段階でスポンサー企業がCM差し替えを判断したことに驚いている。
記者会見において、問題が起こった直後の1年半前から、港社長に当該のトラブルに関する報告が上がっていたことが明らかになった。また、この件は、スポンサー企業には知らされておらず、スポンサー企業は報道で問題の存在を知ることになった。
スポンサー企業は、この点も問題視したはずだ。フジテレビ側は、トラブル相手の女性に配慮してのことだと説明はしているが、スポンサー企業にしてみれば、「説明責任を果たさなかった」「裏切られた」と思うだろう。理由はどうであれ、フジテレビのふるまいは「取引先に対する背信行為」と映ったに違いない。
今後、CMの「撤退ドミノ」は起こるのか
CMの差し替えは今後、正式な撤退へとつながり、「撤退ドミノ」が起こるのだろうか。あるいは、これは一時的な現象にとどまるのか。
まず、CMの撤退ドミノが起こるかどうかは、現時点では何ともいえない。ただ、大手企業の撤退が呼び水となって、他社も撤退していく可能性は十分にあるだろう。
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