「フジCM差し替え」を"英断"と称える人への違和感 企業がCMを差し替える真の狙いは"制裁"ではない

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ネットの中では「フジテレビを潰せ」という極論まで見られるが、同社の大半の社員は問題を起こしているわけではないし、事態を知っていて見てみぬふりをしているわけでもない。ほとんどの社員が日々真面目に働いているはずだ(これは、不祥事を起こした企業すべてに言えることだが)。

さらに、事実関係が十分に明らかになっていない時点で、契約を打ち切るという判断は、必ずしも好ましいこととはいえない。何よりも、現段階で、フジテレビの経営陣や社員がどの程度当該問題に関与しており、どの程度の責任があったのか、完全に不明な状況である。

スポンサー企業がCMの契約を打ち切ってフジテレビを経営的に窮地に追い込むことが、はたして状況を改善に向かわせるのだろうか?

重要なのは「制裁」ではなく、「行動を正す」こと

すでにCMを差し替えたスポンサー各社は、フジテレビに対して、さまざまな申し入れや要求を行っているはずだ。その詳細は報道されないだろうし、明らかにすることもできないのだろうが、今後重要なのは「CMを差し替えた/差し替えなかった」「契約を打ち切った/継続した」ということではないはずだ。

ジャニー喜多川さんの性加害に対して、再発防止特別チームの調査報告書の中では、ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.社)に「メディアとのエンゲージメント(対話)」を求めていた。

今まさに求められているのは、フジテレビとスポンサー企業、あるいはフジテレビとメディア各社との「エンゲージメント(対話)」である。

そのうえで、スポンサーをはじめとする取引先企業は、フジテレビに対して十分な対応を行うことを求めるのが重要だ。取引先企業に求められているのは、フジテレビへの制裁ではなく、彼らの行動を正すことであるはずだ。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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