次に、主人公・蔦重を演じる横浜流星の魅力だ。イケメンなのだが、顔立ちも身体も、どこか中性的で、また口調や身のこなしも軽薄そうで、つまりはマッチョなイメージではないところが好ましいと思った(格闘家を目指していたという本人の肉体は、いわゆる「細マッチョ」だが)。
私(58歳)が想起したのは、若い頃の水谷豊である。NHK『男たちの旅路』などで、過剰な役作りをせず、高い「芸能運動神経」を素のまま活かしたスピード感のある演技が忘れられない。
今回の『べらぼう』でも、「令和の水谷豊」が躍動してくれれば、こちらも、新しい大河のあり方につながっていく。欲を言えば、もっと軽薄でいいし、もっと走って飛んで跳ねてほしいと思う。
小芝風花の放つ存在感
そして花魁「花の井」役・小芝風花の存在感にも注目である。私たち「朝ドラ党」の中で、朝ドラヒロインが強く望まれている俳優の1人。関西出身、関西弁も完璧。NHK大阪制作での主演をお願いしたいところだ。
小芝風花といえば、何といっても2年前のテレビ朝日『波よ聞いてくれ』である。ひょんなことからラジオDJになる鼓田ミナレ役で、高い「芸能IQ」を全身からまき散らすような、はちきれぶりを見せた。
今回の役は、売れっ子花魁ということで、はちきれてばかりもいられなさそうだが、それでも安定的な花魁詞(ことば)や、第2回「男色」の平賀源内(安田顕)に向けて、男の着物を着て「べらぼうめ!」とたんかを切った姿にはしびれた。
「芸能運動神経」vs「芸能IQ」――横浜流星との活きのいいコラボレーションを期待する。
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