リノベーション・オブ・ザ・イヤーに見る「最前線」 グランプリのキーワードは「循環型リノベ」
昭和のころから長らく街のランドマーク的映画館として親しまれてきましたが、2022年8月に突然の火災で焼失。廃業か新築再建のいずれかを余儀なくされました。
新築された物件なのでリノベの賞には該当しないのではとの声もありつつ、空間デザインの継承、館長・地域の人々の想いの継承、再生設計のプロセスを鑑みて、リノベ案件の範疇にあると審査陣から判断されました。
火災の2日前、「ロビーの一角にバーカウンターを新設したい」との要望で、リノベ会社が旧館の設計図を手渡されていたという事実に、再建は運命的だと感じたそう。地元をはじめ全国の人々から、数々の著名人からも応援や寄付が届き、再建の進捗は常にメディアで取り上げられ再建を待ち望んだ声が形になりました。
【注目point3】大胆な手法で個性的かつ快適空間が完成
手狭になったけれど、不動産価格の高騰といった背景も相まって、広い家へ転居という選択ではなく、住み慣れた今の家をなんとかしようという意識を持つ人が増えているようです。
縦空間を活かして床面積を増やす、間取り変更やデザインによって視覚的な広がりを生むなど、空間の使い方、切り取り方など斬新で大胆なアイデアを披露した作品が目立ちました。
古い、狭い、構造的に厳しいなど、さまざまな制約がある中で知恵を絞るからこそ発揮されるクリエイティブなアイデアやデザインが、リノベーションの魅力を高める大きな要素となっています。
●1500万円未満部門 最優秀賞
【感性を解き放つ、45°の秩序】 株式会社groove agent
【感性を解き放つ、45°の秩序】は、間取りの常識にとらわれないクリエイティブなアイデアが光る作品。
44平米という限られた空間に45°の斜線を描くことで、間仕切り壁を設けずに、ワンルームの空間をダイニング、キッチン、リビング、寝室、書斎、洗面室へと振り分け。造作家具、床材の切り替え、天井のレールの配置を45°にすることで、視線が対角上に抜けて、空間がより広く感じられるという、緻密に練られたデザインの勝利とも言えます。
「ワンルームなのに景色も居場所もたくさんあって飽きない」という施主の言葉にリノベ空間の魅力が表れています。