リノベーション・オブ・ザ・イヤーに見る「最前線」 グランプリのキーワードは「循環型リノベ」

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廃棄物を最小化する、つまり「極力ゴミを出さないようにつくる」といった既存建材の活用度がかつてないほど高い点、さらに、このプロジェクトで得たノウハウをWEBで一般公開し、住宅ストックの課題解決に寄与したいという強い意欲などが高く評価されました。

【注目point2】大切なものを次世代に繋ぐ

リノベーションは、家を快適な空間に新しく作り直していくことだけではなく、「壊さず活かす」という思いを通じて、建材や部材、設計思想などを次の時代へ繋ぐ力を持っています。そうした引き継ぐ・繋いでいくことの力を感じさせる作品が数多く注目されました。

●プレイヤーズチョイス・アワード(注)

●実家アネックス・リノベーション賞

【納屋に住む。】 有限会社斉藤工匠店

家から望む日本の原風景にほっこり
家から望む日本の原風景にほっこり(写真提供/有限会社斉藤工匠店)
太い梁や軒天に納屋の面影が宿っています
太い梁や軒天に納屋の面影が宿っています(写真提供/有限会社斉藤工匠店)

【納屋に住む。】は、築63年の納屋を住宅へコンバージョンした作品です。

当初は養蚕に使われ、その後納屋となった建物を、「Uターンしてくる若夫婦の住処としたい」という依頼で納屋リノベがスタート。建て替えも検討したそうですが、曳屋(「ひきや」。建物の位置を移動させること)を機に基礎の組み換えを行い、屋根も改修されて間もないことから、取り壊すのは惜しいと判断されました。

納屋は柱が数本立つのみで間仕切り壁がないため、撤去の必要がなく、設計の自由度が高い点がメリットです。しかし逆に既存用途が納屋の場合、リフォーム瑕疵保険(欠陥が見つかった場合に無償で修理をしてもらえる保険制度)に加入できない(斉藤工匠店が登録していた保証会社の場合)というデメリットも。

耐震診断を行い、既存部を活かしながら要望に沿ったプランを固めること1年、いざ着工となった際に保険加入の対象ではないことが判明したそう。そのため、「R5住宅」(※)を取得して施主の不安を払拭しました。

施主の強い思いを受け取り、高いハードルを乗り越えて、かつての納屋を快適な住空間に生まれ変わらせ、それを施主は受け継いでいく、循環していくという点が、同業者からも高く評価されました。

敷地の広い家では、二世帯で敷地内別居をする人も多いでしょう。そういう方々の一つの指標となりうる作品だと感じました。

※「R5住宅」:リノベーション協議会が認定する「適合R(リノベーション)住宅」で「R5住宅」は一戸建てが対象。検査をしたうえで必要な改修工事を施し、その記録を住宅履歴情報として保管。住宅履歴情報があることで点検やメンテナンスがしやすくなり、売却する際にも役立ちます。不具合に対してアフターサービス保証がつき、購入する人が安心して選ぶことができるという認定制度です。

注:「プレイヤーズチョイス・アワード」とは、エントリーした事業者が自社以外でベストだと思うリノベ作品を選ぶ2023年に新設された賞で、ある意味もう一つのグランプリ作品ともいえます(他の賞はメディア関係者が審査員となり作品を選ぶ)

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