リノベーション・オブ・ザ・イヤーに見る「最前線」 グランプリのキーワードは「循環型リノベ」

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振り返ってみれば、昭和初期の頃までは解体した家の部材を貰い受けて新築や増築の家に再利用していたこともあったそう(筆者の実家の古民家もそうでした)。かつての日本は廃棄物を極力出さない循環型社会でしたが、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代に失われていきました。

SDGsの意識が周知されつつある今、さらに建材費や建築費の高騰という背景もあって、循環型リノベを担う意欲をもったリノベーション企業や作品が登場しています。

総合グランプリ受賞作品

今回、総合グランプリを受賞した【「ReMAKE」-既存の内装を活かす試み-】はまさにその一つ。既存建材の有効活用をとことん考え抜いたことで、審査陣に今後の循環型リノベーションの新たな可能性を大いに予感させた作品となりました。

●総合グランプリ

【「ReMAKE」-既存の内装を活かす試み-】 株式会社TOOLBOX

まるで建築途中のような玄関土間空間
まるで建築途中のような玄関土間空間。左の壁に開口を設けることで、明るさや開放感を付加しています(写真提供/株式会社TOOLBOX)
L型キッチン
右側に冷蔵庫置き場を新設し、既存の壁付けキッチンを半分に切断してL型キッチンに(写真提供/株式会社TOOLBOX)
間取り
広さ約56平米、築57年という築古のマンションを改変。バルコニーに洗濯機置き場、キッチンのかなり後方に冷蔵庫置き場があるといった元の使いづらい間取りも解消(画像提供/株式会社TOOLBOX)

【「ReMAKE」-既存の内装を活かす試み-】は、既存の間取りや内装設備・建材を徹底的に活かすことを前提に進められた、買取再販物件での実験的プロジェクト。構造躯体をあらわしにした内装が印象的で、購入者はこの内装で暮らすのも良し、自分で手を加えるのも良しと感じさせます。

かつて築古物件は、スケルトンに解体して空間を再構築する手法が多かったのですが、近年では所有者によって幾度かリノベーションをなされた物件が増えています。比較的新しい設備や内装が部分的に存在しており、壊すのはもったいないといえる状態。つくり手は「それらの使えるものは徹底して使う」という姿勢で向き合ったそう。

そうした姿勢から新しいアイデア、デザインが生まれました。既存キッチンを切断し再配置、L型キッチンにして調理導線を整え、継ぎはぎのあったフローリングを塗装して意匠もそろえ、壁を一部開口にして視線を広げ、建具や天井材の転用など、分解して初めてわかる既存の状態を踏まえて、職人のノウハウを活かしてさまざまな手法を試みたそうです。

この作品への審査員の評価ポイントは、前述の「サーキュラー・エコノミー」(循環型経済)に呼応している作品だということ。

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