"もう1つの旧ビッグモーター"が歩む哀れな末路 事業再生ばかりに注力、補償手続きは二の次

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損保各社が一斉に反発し、改めて協議を重ねる中で起きた2つ目の事件が、昨年12月の民事再生法の適用申請だった。

損保の複数の関係者は、「今後の選択肢として法的整理はありえるとは考えていたが、何の前触れもなく、申請する直前の朝に突然呼び出された。そこで、民事再生法の適用申請に関する紙切れ1枚を渡してくるありさまだった」と口をそろえる。

その数日後、債権者説明会が開催されると、債務超過の状態にあるというBALMの厳しい台所事情が詳(つまび)らかになった。

土地などの違約金が約330億円

現時点で見通している債務の最大額は約830億円。そのうち銀行などからの借入金が約420億円、次いで借りていた土地などの違約金が約330億円、保険金不正請求などの補償債務が約64億円と見込んでいるという。

中でも、見込み額の変動幅が大きいのが土地などの違約金だ。最小見込み額は約60億円で、最大時と270億円もの差がある。

旧BMは不正請求が発覚して以降も、素知らぬ顔で新規出店を進めていた。そのため「今になってその一部が違約金として出てきてしまった。不正請求関連の債務をはるかに上回る金額で、われわれの補償に影響しないか気をもんでいる」(大手損保役員)という。

今後は民事再生法の適用申請によって、2025年4月ごろまでに銀行や損保などが債権額を届け出て、それを基に再生計画を策定。同計画を実行に移すのは、早くても11月以降になる見通しだ。

BALMや損保各社のこれまでの調査では、2018年1月から2023年8月までに受け付けた修理件数が約20.5万件ある。そのうちの4割に当たる約8万件で不正請求があったとみられている。

中古車販売大手のグッドスピードでは、不正会計に加えて保険金の不正請求も発覚している(写真:時事)

旧BMの事件をきっかけとして、中古車販売のグッドスピードやトヨタ自動車の系列ディーラーでも、相次いで修理費用などの保険金不正請求が発覚する事態になっており、自動車関連業界に向けられる視線は厳しさを増している。

被害回復に向けて、不誠実に映るような対応を繰り返せば、信頼回復の道のりはさらに遠くなる。

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中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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