「警視庁公安部」が"新設部署"に込めた深い意図 世界を震撼させる「ローンオフェンダー」に関係?
アメリカ連邦捜査局(FBI)が2009年にまとめた対策文書によると、LOは、①組織の指示のもとではなく、単独あるいは少数の個人によって実行され、②実行犯は他の人に援助を求めることはあるが、主たる計画は、実行犯が他人に指示されるのではなく自ら生み出したもの、そして、③実行犯は、思想的、政治的、社会的、または宗教的な目的のために致命的な暴力の使用を意識的に容認していて、④殺人に至った、または殺人に至っていた可能性が高い行動と定義している。*
具体的な例を挙げると、2022年7月に安倍晋三元首相が殺害された事件は、FBIの定義では「LO型テロ」に当てはまる。しかし、2024年7月のトランプ氏暗殺未遂事件は、犯人が射殺されてしまったので動機の面での解明は難しいが、「テロ」にはならない可能性もある。
このように、動機が何であるか、また、攻撃に他の人がどの程度関与しているか、という2点を中心に、LO型テロかどうかを判断することになる。しかし、他国ではFBIとは定義が異なることもあり、他のテロや犯罪行為との境界はあいまいだ。
あえてLO型テロを定義するならば、(A)個人で活動し、(B)思想的、政治的、社会的、または宗教的な目的のために致命的な暴力の使用を意図し、(C)外部からの直接の命令や階層構造を持たずに、個人が手口を考案し実行するテロ活動、と筆者は考えている。
* FBI, (2009), Threat Management for the Lone Offender
過激派組織も気づいた「LO」の利用価値
LO型テロは、その性質上、たとえばアルカイダなどが組織的に行う大規模なテロよりは、被害の程度が小さい。
改めて言うまでもなく、アルカイダによるケニア・タンザニアのアメリカ大使館同時爆破テロ(1998年)やアメリカ同時多発テロ(2001年)は、数百から千人規模での死傷者を出した。こうした、数百人以上の犠牲者を出すようなテロを、LO型が実行するのはかなり困難だろう。
では、なぜそれが世界的な脅威となるのか。
それは、組織的に実行されるテロよりも、情報の秘匿性や突発性が高いことから、LO型ははるかに予防が困難だからだ。
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