「住みたい街」として有名な流山市で起きる不穏 井崎市長肝煎りの観光振興企業が経営不振に

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井崎市長は就任以降、成長戦略として2つの「増加」を掲げてきた。「定住人口の増加」と「交流人口の増加」だ。TX沿線上の発展によって「定住人口の増加」には成功した。もう一つの交流人口増加に向けて市が注力したのが流山本町の観光振興だ。「歴史的な建造物を活かしたツーリズム」で交流人口を増加させる方針を掲げ、市は古民家再利用事業に補助金を投入した。

2016年には流山本町・利根運河ツーリズム推進課(以下、ツーリズム推進課)を設置。2020年には観光振興の舵取り役として観光地域づくり法人(DMO)、件のNTDが誕生する。

DMOとは「Destination Management Organization」の略で、官民の連携で観光地域づくりを推進する法人を指す。政府はDMOを「稼ぐ観光」の司令塔役として位置付け、観光庁に登録されたDMOは地方創生推進交付金の支援対象になる。

NTDは流山市が50%超の筆頭株主となり、古民家活用事業や白みりん事業に乗り出した。社長には旅行大手JTBでの勤務経験を持つ門脇伊知郎氏が就任。「地域の稼ぐ力」を引き出して流山本町を盛り上げる、はずだった。

6000万円超の債務

ところが事業は軌道に乗らなかった。

2021年4月以降、NTDは、2階建て古民家の1階で営業をしていた「万華鏡ギャラリー&ミュージアム」の業務委託を市から受託し、営業を開始した。翌年には万華鏡ギャラリーを2階に移し、1階で日本茶カフェを開業。ところが、このカフェは2年も経たないうちに「収益化が困難」という理由で2024年2月に閉店してしまった。

観光施設の指定管理業務に関しても、NTDが管理者となって以降、人件費の増加などを理由に予算だけは増額された。だが、市内の他施設よりも増額幅が大きかったことなどから市議会では事業の検証や予算支出の妥当性を問う声が上がっている。

関係者が口をつむいでいるため詳細は不明だが、2023年度末の決算で債務残高が約6177万円にまで膨れあがり、門脇氏は辞任。現在は元千葉銀行員の吉河智彦氏が社長に就いて再建を目指しているが、2024年9月末時点でも約4713万円の債務を抱える。

流山市発祥の白みりんをテーマにした「白みりんミュージアム」(2025年3月開館予定)の指定管理者となったNTDには、市の予算から指定管理料が支出される。2024年10月の市議会では、2025年度から2029年度にかけ最大計2億1300万円をNTDに拠出する補正予算案が可決された。

では、事業収入はどれだけ見込めるのか。年間2万人の来場を目標に掲げる白みりんミュージアムの入場料は大人300円。仮に目標を達成したとしても入場料収入は年間600万円程度にとどまる。

2025年3月にオープンする「白みりんミュージアム」(撮影/筆者)

外資系コンサル会社で観光事業に従事した経験もある吉河社長に対して、「白みりんミュージアムの訪問客を街全体に広げてほしい」と期待する地元の声もある。だが、2億円以上の予算をかけるだけの「観光推進効果」を得られるかどうかは未知数だ。

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