「なぜ嘘をついてはいけない?」ローマ偉人の教え クインティリアーヌスと三島由紀夫に通じる思想
古代ローマを描いた『テルマエ・ロマエ』などで知られる漫画家・随筆家のヤマザキマリ氏と、古代ローマの公用語であったラテン語を研究し、Xでも人気のラテン語さんが、2人の共通の話題である古代ローマやラテン語をめぐって対談しました。ヤマザキ氏は、クインティリアーヌスの『弁論家の教育』に三島由紀夫に通じるものがあると指摘します。2000年の隔たりを感じさせない、時代を貫く思想とは?
※この対談は2人の共著である新刊『座右のラテン語』からの抜粋です。
嘘つきのすすめ?
mendacem memorem esse oportet「嘘つきは記憶が良くなければならない」
ヤマザキ:この言葉は、三島由紀夫が『不道徳教育講座』という本に書いていた一節に通じるものがあります。彼は確か、本当に頭がいい人じゃないと嘘はつき通せないと書いていたはずです。ばれない嘘、破綻のない嘘はメンテナンスが難しい。
確かに、真実のほうが想像力を駆使しなくていい分、よっぽど簡単です。そもそも嘘というのは想像力によって作られるものですからね。三島の捉え方はこのラテン語に通じるところがあるように感じました。
ラテン語さん:クインティリアーヌスという修辞学者の『弁論家の教育』という著作に出てくる文章です。
ヤマザキ:弁論というのは、実はハッタリが大事だったりするわけです。あることないことを、説得力を交えて力強く説く。だから聞いてる人も半信半疑なんだけど、それをいかに面白く伝えられるかどうかが評価の基準となる。
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