「なぜ嘘をついてはいけない?」ローマ偉人の教え クインティリアーヌスと三島由紀夫に通じる思想
イタリアの学校での口頭試問なんてまさにそんな空気でした。私の愛するプリニウスの『博物誌』も、見てもいないものをさぞ見てきたかのように書いていますけど、あれはあれでいいんですよ。読む人も、そこに絶対の信憑性なんて求めてませんから。半分洒落だと思って面白がっていればいいのです。
なぜ嘘をついてはいけないのか
ヤマザキ:アメリカ大統領選の候補者のスピーチなんかも、大言壮語に古代からの弁論の感じが出ている気がしますね。真実よりも、いかにインパクトのある言葉で民衆の注意力を集められるか。
ラテン語さん:クインティリアーヌスが言っているのは頭の良さ全般というより記憶力なので、三島由紀夫とはまた少し違いますが、ある人にAを言い、また別の人にはBと言ったというような嘘の記録を覚えて破綻がないようにするのは難しいでしょう。
ヤマザキ:そうなると、やはり記憶力だけではなく、テクニックを要するので、頭脳を駆使しないとうまくいきませんよ。浮気の言い逃れなんかは典型例ですよね。
ラテン語さん:もちろん私は浮気をする気もないんですけど、仮にしようと思ったところで、記憶力にあまり自信がありません。
ヤマザキ:ならこんな仮想もやめておきましょう(笑)。
クインティリアーヌスも三島も、つまり嘘を侮るな、と言っているのだと思います。嘘をつく前に、自分が嘘を貫き通せるキャパシティがあるかどうかをよく吟味しなさい、嘘を徹底的に管理するのは大変だから、結論としては嘘はお勧めできません、という捉え方もできます。それでも頭のいい人はやってのけるんでしょうけど。
ラテン語さん:仮に自分が頭がいいとしても、そんなことに頭の良さを使いたくないものですね。
ヤマザキ:嘘で自分をすっぽり覆い隠している人も世の中にはいますけどね、そんな生き方は虚しいんじゃないかなあ。記憶力や知恵の維持も大変そう。おっしゃる通り、嘘に費やせるエネルギーがあったら、他のことに使いましょう。
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