ヤマザキマリ「飢えは多くのことを教える」の真実 実体験で腑に落ちたラテン語の格言が意味すること
ただ危険なのは、できると思うからできると思っていたのに、結果的にできなかった時です。思い通りに行かなかったことへの落胆に魂を持っていかれないようにしないといけません。
志望校に絶対受かると思っていながら、受からなかった時どうするか。仕事で思っていたような結果が出なかったらどうするか。そのような顛末を受け入れる寛大さもしっかり持っていないと、懸命に頑張った自分がかわいそうです。そういう寛大さを持つことも勇気が要ることですよ。
ラテン語:できなかった時は、いったんは受け入れて次の糧にするというか、次どうやって成功するかを反省して考えるとかが必要ですね。
ヤマザキ:そうですね、失敗や屈辱は人間が成熟するための必須栄養素ですからね、良い養分をもらったと思ったほうがいい。
ちなみにこの格言は古代ローマを代表する詩人、ウェルギリウスですよね。ローマの政体が変わりゆく激動期の人ですよね。優柔不断にしているとどうなってしまうかわからない、非常に不安定な社会だったからこそ、自分が確信を得たことに向かって突き進んでいかなきゃという信念の強さが必要だったのでしょう。
同じ意味の別の格言もラテン語さんは選んでいますね。
fortes fortuna adiuvat「運は勇敢な者の味方をする」
これはウェルギリウスより前の詩人、テレンティウスです。これもまた、自分のやりたいことを突き進んでいこうとしているラテン語さんにとって、とても大事な言葉なのでしょうね。
石橋を叩きすぎることはあまり良くない
ラテン語:ヤマザキさんに伺いたいのが、17歳で単身、イタリアに渡るというご経験です。これこそ大胆で勇敢な決断だったと思います。確か、人に勧められてのことだったんですよね? すべての道はローマに通ず、と言われたと以前お聞きしました。
ヤマザキ:14歳の時のヨーロッパ一人旅の最中に出会ったイタリア人のおじいさんに言われた言葉ですね。ブリュッセルの中央駅のホームで1人佇む私を目撃し、家出少女だと思ったそうです。事情を説明したら「1カ月も時間があったのにフランスとドイツだけ?? イタリアをなぜ端折った!?」と怒鳴られ、その時突然ラテン語で「Omnes viae Romam ducunt!」と発言したんです。