ソニーFGが買収、「新興保険企業」の不都合な事実 遠藤社長がブレーン役だったjustInCaseの統治不全

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

まず、ソニーFGはジャスト社の買収に際してどのような利益相反防止措置を講じたのか。先述したように、ソニーFG社長である遠藤氏とジャスト社との関係は「お友達買収」との批判を招く原因となった。ソニーFGの回答は次のようなものだ。

「同社(ジャスト社)の事業の評価、子会社化の決定にあたっては、外部の専門家も加え財務面など多角的な助言も得て、社内の会議体においてあらかじめ定められたプロセスに従って、適切な検討、機関決定を行ってまいりました」

つまりソニーFGは、企業として正式な手続きを踏んだ、“まっとうな”買収だと主張している。なお、「遠藤自身が、同社(ジャスト社)の経営や意思決定に参加したり、業務執行などを行ったりしたことはいっさいありません」とも説明している。

では、ジャスト社の内情についての認識やコンプライアンス上の懸念についてはどのような見解なのか。質問には「畑氏の個人的な状況については、弊社として答える立場になくお答えいたしかねます」とだけ回答があった。

ジャスト社にはソニーFGに適切な情報開示を行ったかを問い合わせた。

ジャスト社からは、「畑に関して頂戴した各種ご質問につきましては、回答を差し控えさせていただきます」としたうえで、「今回の、ソニーFGによる弊社株式の取得に際しては、ソニーFGが依頼した外部専門家を中心として、さまざまな調査および確認が行われ、弊社は真摯に対応しております」との回答があった。

なおコンプライアンスやガバナンスについては、「主要な外部株主に重要な会議体に都度参加してもらい、重要な意思決定ならびに報告を行うとともに、各種種類株主への事前承諾事項が規定されている」ことや、2022年の業務改善命令後は社外取締役を新たに選任するなどして、体制を強化していると説明した。

上場目前に開いたパンドラの箱

ソニーFGはソニーグループからのパーシャル・スピンオフ(分離・独立)を経て、2025年10月の株式上場を目指している。上場時の時価総額は1兆円以上と想定され、2025年トップクラスの大型新規上場になることは間違いない。

上場後のソニーグループの持ち分は20%未満となる見込みだ。上場子会社だった2020年までとは異なり、2025年秋以降は独立した上場会社としてさらに高い水準のコーポレートガバナンスとコンプライアンスの確立が必要となる。

ジャスト社はソニーFGの一員となった。ソニーFGは「グループ各社より必要な人材を出向させ経営体制を整備する準備を進めております」という。買収してしまえば経営体制は改善できるという腹づもりなのだろう。

それでも、節目となる再上場まで1年を切ったこのタイミングに、こうした疑問の多い買収に踏み切った事実は残る。将来の株主からしてみれば、ソニーFGの意思決定プロセスの不透明さが、大きな不安のタネとなることは間違いない。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事