「1000億円投資」ジャパネットが握る長崎の"命運" 異例の「民設民営」スタジアムに見る"究極の地元愛"

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いまの長崎スタジアムシティの敷地には、防衛省・JAXA向け商品を製造する「三菱重工業幸町工場」があった。同社の拠点再編もあって工場が閉鎖(諫早市などに移転)されることになり、広大な用地の売却先に名乗りを挙げたことから、ジャパネットHDとこの地の縁が始まる。

長崎スタジアムシティ
赤丸部分が現在の「長崎スタジアムシティ」。左は1924年、右は2013年。「今昔マップ」より(写真:筆者撮影)

約4000社のグループ会社を持つグローバル企業・三菱の歴史は、1870(明治3)年に長崎藩の海運事業を譲渡されたことから始まる。創業の地・長崎との関係を重視する三菱重工業は、「活気あふれる持続可能なまちづくりを先導する拠点」などのコンセプトを打ち出し、跡地を街の活性化に活用してくれる売却先の公募を始めた。

各社の報道によると、この公募に応じたのは5社。「JR九州」「大和ハウス工業」「イオン」「イズミ」など、錚々たる事業者・デベロッパーが動きを見せている。

なにぶん、市街地の4割を傾斜地が占める「さかんまち(坂の街)」長崎で7.5haもの平坦な土地、かつ駅チカ物件を得られるチャンスは、恐らくもうない。市内にお住まいの方に聞くと、当時は「あそこにできるのはイオンモール?それともゆめタウン(イズミが展開するショッピングモール)?」と、跡地活用の話題で持ちきりであったという。

不動産開発“初心者”のジャパネットに白羽の矢

ジャパネットHDは応札した他企業のような「都市開発」「商業施設運営」といったノウハウはない。しかし同社は1986年に佐世保市で創業した長崎県発祥の優良企業であり、かつ、長崎県唯一のJリーグ加盟チームである「V・ファーレン長崎」の経営権を公募の前年に取得済。地域に愛されるサッカーチームのオーナー企業として、集客の切り札「サッカースタジアムの新設構想」を打ち出す。

同社がノウハウを持たない部分は、「サクラマチ クマモト」などの複合施設開発を手がけたJLLグループ、「パナソニック スタジアム 吹田」「カシマサッカースタジアム」などサッカースタジアムの施工実績がある竹中工務店を協業のパートナーに迎えることで解消された。

さらに同社が打ち出したスタジアム建設に県の商工会議所や経済同友会、長崎市商店街連合会がこぞって支持を表明しており、2018年4月にはジャパネットHD・JLLグループ・竹中工務店が、他企業を制して優先交渉権を獲得するに至ったのだ。

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