「遺伝子組換えでない」の表示がめっきり減った訳 「遺伝子組み換え食品」は本当に危険なのか

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遺伝子組換え食品を、そのまま販売したり加工食品の原材料として製造販売する際に日本では、原則として「遺伝子組換え」と表示して販売することが義務付けられています。対象は大豆やとうもろこし、なたね、パパイヤなど9農産物と、それを原材料とした33加工食品群(豆腐や納豆、豆乳、コーンスナック菓子など)です。

昔は、「遺伝子組換えでない」という表示が豆腐や納豆などでよく見られました。しかし、現在は表示の規制が厳しくなり、遺伝子組換え品種と分別して運び加工するなどしたうえで、検査などにより「遺伝子組換えの混入がない」と確認されたものでないと「遺伝子組換えではない」という表示はできません。

輸入運搬や工場で「うっかり組換え大豆が1粒入ってしまった」というようなことも許されなくなり、「遺伝子組換えでない」という表示の製品はめっきり減りました。

油、液糖、醤油には表示義務はない

一方、油や液糖、醤油などは、原材料として遺伝子組換え品種を用いていても表示義務はありません。油や液糖には、組換えされた遺伝子や、その遺伝子からできたたんぱく質などが含まれておらず、検査で遺伝子組換え原材料を用いたかどうか判断できません。醤油は、発酵工程で遺伝子やたんぱく質の分解が進んでおり、これも検査では判別できません。こうしたことから、表示義務は課されていないのです。

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日本の食品メーカーは、「遺伝子組換えは消費者に好まれていない」と理解しています。そのため、用いた場合に「遺伝子組換え」と表示しなければならない豆腐や納豆などの食品については気をつけ、原材料として遺伝子組換え品種を用いないようにしています。一方、油や液糖、醤油など表示が必要でない食品製造には用いています。

また、とうもろこしや大豆、なたねなどの絞り滓は、飼料として動物に大量に与えられていますが、その動物の肉なども遺伝子組換え品種で育てられていることを表示する必要がありません。そのため、日本人は知らない間に2000万トンを超える遺伝子組換え作物を輸入し、直接的に、あるいは肉や卵などとして間接的に食べている、ということになります。

遺伝子組換え食品が人々に食べられるようになってもうすぐ30年になり世界で利用されていますが、健康影響をもたらす事故は1件も起きていません。厳しい審査が効果を発揮しているのでしょう。神経質になる必要はないだろうと考えます。

松永 和紀 科学ジャーナリスト

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まつなが わき / Waki Matsunaga

1963年長崎市生まれの東京育ち。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社の記者として10年勤めた後に退職し、科学ジャーナリストとして活動を開始。2011年に、科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体「Food Communication Compass」(略称フーコム)を設立。著書に『メディア・バイアス――あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)、『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)などがある。

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