当社は昔から安全な野菜を食べることを推奨してきたのに、お客様に対して「農薬や化学肥料はコントロールするけれど、放射性物質は自分たちでコントロールできないので勘弁してください」と言っていいのかと。
ある意味今回の原発事故で、食の安心・安全を提唱してきたわれわれの「鼎(かなえ)の軽重」が問われたわけですね。
もちろん生産者も被害者です。特に当社は2600軒もの契約農家と取引があり、一般の流通に比べて生産者との関係性が非常に強いので、何とかしてあげたいという思いがありました。
しかし、一方で小さいお子さんを抱えるお母さんたちがいるわけです。原発事故直後、福島県をはじめ東北のものを食べないと人間性を疑われるような風潮が一時期ありましたが、僕はそれに対して非常に疑問を感じました。
不確定な情報の中、不安で不安で仕方がなく、どうしても東北や関東の食材に手が伸びないというお母さんたちの気持ちを“風評被害”の一言でバサッと斬り落としていいのだろうかと思っていたんです。
だから、ここはやはりちゃんと安全性を確認し、僕らがお客様や自分の子どもに食べさせたくないと思うものは売らないつもりでやっていこうと決めたんです。やる以上は適当な検査でお茶を濁すわけにはいかないので、正確な数値を公表できる第三者機関による検査を行うことにしたのです。