ユニチカ"最後のリストラ"売り上げの45%を整理 "引き金"は生き残りを託す分野での失敗だった

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中国製品との差別化を考えるなら、インドネシア増設は、鮮度保持に有効なガスバリア性フィルムなど機能性フィルムに特化すべきだった。そうしなかったのは、通常のプレーンなフィルムの方が売上げのボリュームを稼げ、「ナイロンフィルム世界一」の体面を維持できるから、だったのだろうか。

同様に、ユニチカは赤字の衣料繊維からの撤退を逡巡し続けた。一時、コロナの医療防護服需要でたまさか黒字になったとはいえ、万年赤字事業に固執したのは、300億円の売り上げを失えば、かつての「三大紡績」としての体面が保てない、と考えたのだろう。

「財務制限条項」が引き金に

しかし、インドネシアの106億円の減損特損がすべてを吹き飛ばした。ユニチカの借入金814億円については、財務制限条項が付いているからだ。

有価証券報告書に記された財務制限条項によれば、①2024年度末の純資産は2022年度純資産439億円の75%以上でなければならない、②2期連続で最終赤字になってはいけない。ところが、106億円の減損を決定した瞬間、2つの条件をクリアできないことが確定的になった。

そうすると融資契約は無効となり、ユニチカは即、814億円の返済を迫られる。もちろん、そんなカネはどこにもない。主力の三菱UFJ銀行も、メインバンクとしての責任上、巨額の貸し倒れを覚悟せざるを得ない。

ユニチカは11月28日、地域経済活性化支援機構による支援決定を発表した(編集部撮影)

ユニチカが三菱UFJ銀行ともども、地域経済活性化支援機構(以下、支援機構)に飛び込んだのは、このためだ。支援機構は第三者割当増資でユニチカに200億円出資し、最大150億円の融資枠を設定する。2014年に三菱UFJ銀行が優先株で出資して以来、ユニチカは事実上、銀行管理下にあった。今度は、運転席には支援機構が座ることになる。

支援策は、いわば銀行を”逃す”策でもあるのだが、その見返りに、三菱UFJ銀行は優先株217億円の無償譲渡、”最後の追加融資”90億円に加え、銀行団債権放棄430億円の約束に責任を持つことになった。

今後、ユニチカは支援機構の指導の下、全体の半分近い事業の整理に取り掛かる。上埜修司社長は「雇用維持に最大限配慮する。事業譲渡にあたっては、雇用継承がポイントになる」と言う。だが、ただでさえ採算の悪い事業を社員付きで引き受ける会社がどれだけ出てくるか。譲渡先が見つからなければ、生産停止、清算手続きに移行する。

とりわけ、3つの整理事業が集中する岡崎事業所はほぼ丸ごと処理の対象となる。地域経済への影響は甚大だろう。「雇用維持」を強調する上埜社長以下、現経営陣は2025年4月末、社外役員を除き全員退任する。文字通り、雇用維持=「地域経済活性化」のミッションが支援機構の両肩にかかってくる。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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