錯覚から探る「見る」ことの危うさ《第4回》--不可能モーションの設計

前回は、不可能立体の絵と呼ばれるだまし絵の中に、その名に反して立体として作れるものがあることを紹介した。それと同じトリックを別の形で用いると、立体自体はありきたりのものに見えるのに、そこに動きを加えるとありえない動きが生じているという知覚を作り出すことができる。これも新しい立体錯視で、不可能立体に対応して不可能モーションと呼ぶことができよう。
 
 不可能モーションを作り出す立体の一例を図1に示す。この図の(a)は、錯覚の生じる視点位置から立体を撮影したもので、多くの人にとって、中央の最も高いところから四方へ向かって下り斜面が伸びているように見える。しかし、どの斜面に玉を乗せても、重力に反して斜面を転がりながら上っていくように見える。その結果、図の(b)に示すように、玉は中央に集まる。


図1.(a)左、(b)右 不可能モーション「なんでも吸引四方向すべり台」

 

この立体と玉を別の位置から撮影したところが同図の(c)であるが、これからもわかるようにこの立体は中央がいちばん低くなっている。だから、斜面に乗せた玉は、重力に従って、高いところから低いほうへ向かって転がり落ちているだけである。


図1.(c)

この不可能モーションの動画は、「http://illusioncontest.neuralcorrelate.com/cat/top-10-finalists/2010/#post-2016」で見ることができる。


 この不可能モーションの錯覚は、2010年にフロリダで開催された第6回ベスト錯覚コンテストで1位を獲得した。


 不可能モーションの錯覚を生み出す立体をあと2つ紹介しよう。図2の(a)は、柱の両側に四角い窓枠が突き出しているように見えるが、同図(b)に示すように、1本の棒が2つの窓を同時に貫く。
 
 棒が湾曲していないとこんなことは起きないように思われるかもしれないが、実際には、(c)に示すように、棒は真っすぐで、代わりに窓枠が真横ではなくて前へ突き出している。


図2.(a)左、(b)右 不可能モーション「窓と棒」


図2.(c)

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