錯覚から探る「見る」ことの危うさ《第4回》--不可能モーションの設計

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動画を見ていただくとわかるが、視点を動かした画像を見て、立体の本当の形を理性で理解したはずなのに、視点が元に戻るとまた錯覚が起こってしまう。私たちの脳は、理性の及ばない深いところで、画像から立体を勝手に作り出してしまっているようである。
 
 このとき、脳は、直角を組み合わせた立体を優先して作り出しているように見える。なぜなら、図2、図3では、中央の柱から窓枠や横木が直角に出ていると解釈されるし、図1では床面に対して支柱が垂直に立っていると解釈されるからである。

ところで実社会においても斜面の向きを逆に感じる錯覚がある。車のドライバーが、自分が走っている道路が上り坂か下り坂かを読み間違える錯覚だ。観光スポットになっているところも多い。
 
 日本では、香川県の屋島ドライブウェイにあるおばけ坂が有名である。図4は、韓国の済州島にあるミステリー道路という観光スポットである。手前の道路は向こうへ向かって下っているように見えるが、実は上り坂である。


図4. 韓国済州島のミステリー道路


 上りを下りと間違えてブレーキを踏むと、スピードが落ちて渋滞の原因となる。逆に下りを上りと間違えてアクセルを踏むと、スピードが出過ぎて事故の原因となる。
 
 したがって、この錯覚の仕組みを解明して、錯覚の生じない道路環境を整備できれば、渋滞や事故の軽減に貢献できるであろう。これを目指して、不可能モーションの更なるバリエーションを追求中である。


すぎはら・こうきち
明治大学特任教授、工学博士。岐阜県生まれ。電子技術総合研究所、名古屋大学、東京大学などを経て現職。2010年ベスト錯覚コンテストで優勝。趣味はそば打ち。

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