錯覚から探る「見る」ことの危うさ《第4回》--不可能モーションの設計
図3(a)は、柱に4本の横木が互いに直交する方向へ伸びている立体に見えるが、ここへ輪をかけると、(b)に示すように、輪は柱の奥にありながら、4本の横木の前を通過し、こんなことはありえないように見える。実際には、同図の(c)に示すように、4本の横木はすべて後ろ向きに伸びている。
図3.(a)左、(b)右 不可能モーション「止まり木と錯覚知恵の輪2」
図3.(c)
不可能モーションはほかにもたくさん作ることができる。上に紹介したものを含めて10種類の不可能モーションを収録した動画は、明治大学の動画サイト「http://gcoe.mims.meiji.ac.jp/jpn/movie/impossible_motions2/index.html」で見ることができる。
これらの不可能モーションは、次の方法で設計できる。まず、普通の立体をコンピュータの中に数値データとして作る。これには、形状設計のためのCADシステムなどが利用できる。
次に、視点を固定して、そこから立体を見たとき得られる絵を計算する。これには、コンピュータグラフィックスの技術が利用できる。最後にその絵を投影図に持つ立体を表す方程式を立てる。この方程式は無限に多くの解を持つから、その解の中から最初の立体とは別のものを選ぶ。
ここで、斜面の向きが最初の立体とは逆向きのものを選ぶなど、目的の不可能モーションを実現できる立体を選べばよい。