では、エコノミー戦略→中価値戦略→プレミアム戦略と、価格と価値が正比例した関係、「バリューライン」から飛び出るにはどうしたらいいのか。最もやりやすいのが、価値はそのままで、価格を下げて「グッドバリュー戦略」に転換することだ。価格を下げる余地は固定費を圧縮することである。イメージとしては個人経営の理美容店。自宅の1階をサロンとしている場合など、元々が自社物件であるため、価格の固定比の組み込みを下げればサービス提供価格を引き下げられる。実際にQBハウスの近隣にある個人経営理容室は「カット・シャンプー・セットで1500円」などというサービスを提供している店も多い。かかる時間は15分を超えているが、固定比率の引き下げによって店としての損益分岐点を下げているため成立している。
その他の業界の今後を占ってみると、ネイル業界であれば、現在のところマニキュアのように家庭ではできない「ジェルネイル」や、さらにそれに絵柄を加える場合なども相場を上回る価格設定ができている。しかし、そろそろ過当競争が始まっているため、プレミアムなサービスをそのまま価格を下げて提供する「高価値戦略」への転換が求められるだろう。となると、元々原材料比率が低い業界のため、固定比率をどう下げるかが課題となってくる。
マッサージ業界はプレミアム要素を提供しているプレイヤーがあまり見当たらないので、近く過当競争に突入すると考えられ、「グッドバリュー」に集約されそうだ。マンツーマンのスポーツトレーナーは市場自体まだ大きくないため、黙っていてもプレミアム価格が受け入れられている場合も少なくないが、今後は「独自のメソッドを提供する」など何らかの価値向上が求められる。それによって「高価値戦略」で差別化・生き残りを探ることとなるだろう。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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