■映画館にも求められる変革
まず国内映画業界の市場規模をざっと俯瞰しておこう。『世界のエンタメ業界地図2012年版』によると、2010年の興行収入は、過去最高の2207億円強で、106億ドルの北米市場(アメリカ・カナダ)に次いで世界第2位。ここ10年ほどは、2000億円前後で推移している。
1スクリーン当たりの興行収入は2001年の7743万円から、6469万円に減少している一方で、スクリーンの数は、2001年の2585から、3412へと大幅に増加している。
11月29日付の日本経済新聞の記事「映画スクリーン一転減少、今年、18年ぶり--シネコンの伸び鈍化」によると、「今年9月末時点の映画館スクリーン数は、昨年末時点に比べ34少ない3378にとどまった。同期間中に一般映画館のスクリーン数が53減った一方、シネコン施設数は317と2カ所の増加にとどまったから」という。
記事ではシネコンの伸びが鈍化した理由について、「07年秋に延べ床面積1万平方メートル超の郊外出店を規制する『改正まちづくり3法』が完全施行され、08年以降、郊外型大型ショッピングセンター(SC)の開業数は3年連続で減少。シネコンは大型商業施設に併設する場合が多く、その影響を受けている」と分析している。
では、映画館というビジネスのどこに問題があるのだろうか。すぐに思い浮かぶのが、平日に映画館に行った時のあの、空きっぷりだ。「うわっ!俺たちぐらいしか客がいない…」「やっていけるのかね…」という会話をした覚えがないだろうか。
この直感からは、問題の根本はスクリーン数を増やし続けるだけでなく、「稼働率」を向上させることにあるはずと思える。新作の封切り直後や土曜日曜など以外の映画館のシートは、恐ろしいほど空席が目立つ。航空会社にたとえるなら、こんな状態で飛行機を飛ばしたら赤字間違いなし。稼働率向上によって、映画館というハコの売り上げ・利益を改善することが先決だろう。上映一回あたりの空席率をいかに低減するかがキモとなるはずだ。
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