■若者はホントに消費をしなくなったのか
トヨタの大ヒットCM「のび太のバーベキュー」篇。路線バスでバーベキューに出かけたのび太(妻夫木聡)はクルマで来たスネ夫(山下智久)に、しずかちゃん(水川あさみ)をあっさり連れ去られる。いつもの如く机の引き出しから登場したドラえもん(ジャン・レノ)に「クルマ出して~」と懇願するが、「ダメ、免許ないじゃん」と諫められる。CMのメッセージは「免許を取ろう」だ。
2011年11月22日付日本経済新聞の記事によれば、20代前半の免許取得率は77.6%と4年で4.6%低下しているという。免許を取ってもクルマの購入にはハードルがある。ソニー損保が新成人1000人に実施したアンケートによれば、車を持たない理由として7割が「経済的余裕がない」と回答したという。
若者の「〇〇離れ」ということが叫ばれて久しい。ただし、ここで短絡的に、格差拡大による若者の貧困化、草食化というイメージを持たないよう、注意が必要だ。例えば『絶望の国の幸福な若者たち』の著者で社会学者の古市憲寿氏は、様々なデータや分析を俯瞰した上で、「若者は決してモノを買わなくなったわけじゃない。買うモノとそのスケールが変わっただけの話なのだ」と結論づけている。
また2011年1月15日の日経MJの特集「コスパ世代を探れ」の中で、博報堂若者生活研究室アナリスト原田曜平氏は、「4畳半に住んでフェラーリを乗り回すようなことはないが、部屋は狭くとも寝心地のいいベッドを買ってアロマをたいたり、100万円の海外旅行には行かないが、お手ごろな熱海にちょこちょこ行ったり。自分の若いころと比較するから理解できないだけで、時代のステージが大きく変わった分、表現の仕方が変化したと考えればいい」とし、「バブル世代に権限がある限り、20代の成熟した消費を理解するのは難しいかもしれない」とキツイ。
要するに「自由になるお金」が昔の若者と比べて本当に少ないかどうか、はっきりとしたデータはない。デフレであらゆる消費財は安くなっている。例えば80年代前半、テレビは21型で21万円前後だが、現在は32型が4万円台から買える。「コスパ世代を探れ」の中でも、「『常におカネに余裕がある』『いつもおカネに余裕がない』のどちらに近いかとの問いに、『余裕がある』に『近い』『やや近い』と答えた人は37.3%。団塊ジュニアとほぼ一緒で、バブル世代より7ポイント近く多い」とのデータを紹介している。
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