クリスマスの新定番「1人シュトレン」浸透のなぜ 日本で独自進化し続けるシュトレンの現在地

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その背景をいくつかの角度から分析してみよう。女性にフォーカスすれば、自分の財布を持つ人がめずらしくなくなり、好きなこと、やりたいことにまっすぐ向かえる人たちが増えたことがある。家族と言えども共有できない楽しみはある、と割り切る、個人として自立した女性が増えたのではないだろうか。

クリぼっちについてみれば、人気ドラマシリーズ『孤独のグルメ』の影響もあり、個食を楽しむ文化を容認する社会になってきたことが影響しているだろう。

クリスマスの位置づけの変化がありそうだ。バブル時代は、クリスマスは恋人と過ごすものという世間の圧が強かった。その上の世代にとっては、家族で集まる年中行事の1つだった。しかし平成世代にとって、クリスマスは必ずしもパーティの日ではない。

よくも悪くも「孤独になった日本人」の象徴?

先のレオパレス21の調査では、クリスマスはテレビやゲームを楽しむなど静かに過ごす人が多い。デートする人もレストランより自宅で過ごす人が多く、高級店へ行くバブル期の価値観は過去になっていた。

バブル期はまだ、「欧米に追いつけ追い越せ」のムードが残っていたこともあり、経済的な豊かさを求める人が多かったことに加え、背伸びすれば高級店に行ける経済力も若い世代が持っていた。しかし今は、欧米に引け目を感じる気持ち自体がわからない、という人も多くなっただろうし、若い世代に経済的な余裕もあまりない。

恋愛や家族のウエイトが低下した時代とも言える。1人暮らしは多数派で、少子化は止まらない。さらに、四六時中SNSで誰かとつながっている人たちにとっては、1人で過ごすこと自体が、ホッとできる貴重な時間となっているのかもしれない。

「1人シュトレン」は、いい意味でも悪い意味でも孤独になった日本人の変化を表していると言えるのではないだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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