悲鳴!実質手取り額はこんなに減っている 共働き、片働きなどを年収別に徹底比較
税と社会保障の一体改革の議論が始まった2011年から、消費税増税などの負担増が家計に与える影響を試算してきた大和総研。金融調査部の是枝俊悟研究員は、2017年4月の消費税率の10%への引き上げまでを視野に入れ、翌2018年までの「実質可処分所得」の変化を算出した。
家族形態や年収で違い
税引き前の年収から所得税、住民税、社会保険料を差し引き、児童手当を加えた名目の「可処分所得」に、消費税増税にともなう物価上昇による目減りを反映させた数字。平たく言えば、実質的な手取り額だ。
その結果、家族形態や年収によって負担増の程度が異なることがわかった。パターン別に見ていこう(グラフ参照)。
●片働きより有利な共働き
世帯年収1000万円の共働き世帯(夫婦ともに年収500万円、3歳以上中学生以下の子ども2人)では、2011年から2015年にかけて実質可処分所得が36.7万円減る。消費税率が通年で10%になる2018年には、減少額は約50万円に達する。仮に2011年の段階で家計収支がトントンの家庭が同じ生活を続けると、収入が増えない限り7年後には年間約50万円の赤字に転落する計算だ。
負担の主な内訳を見ると、最も大きいのが消費税率引き上げと厚生年金保険料引き上げ。児童手当の縮減や、住民税の年少扶養控除の廃止も響いている。
専業主婦など片働き世帯の受ける打撃はもっと大きい。実質可処分所得はすでに2011年時点で、共働き世帯より約50万円も下回っている。所得税は世帯年収ではなく個人に累進課税され、年収各500万円の共働きより高い税率が適用されるためだ。
専業主婦の夫には基礎控除に加えて配偶者控除も適用されるが、共働きには基礎控除が夫婦両方に認められるので、その点ではイーブン。専業主婦世帯が有利とはいえない。
スタート時点で共働き世帯とこれだけついていた差は、年とともに拡大していく。片働き世帯では、実質可処分所得の減少額が、2015年までで47.8万円、2018年までで59.9万円と、最終的には共働き世帯を10万円ほど上回る。2012年6月から、児童手当に設けられた年収960万円の所得制限が響いている。所得制限は、世帯年収ではなく、夫婦どちらか多いほうの年収が基準。試算の共働き世帯は夫妻とも年収500万円のため、制限には引っかからない。
●高年収には新たな負担
片働き世帯の2011年から2018年までの実質可処分所得の減少額は、年収300万円で24.7万円、500万円で32.2万円、1500万円では82.7万円となった。年収1500万円の世帯には2016年以降、給与所得控除の上限額引き下げによる新たな負担が加わるため、減少額がとりわけ大きい。
年収が高いほど負担額は大きくなるが、負担率は必ずしもそうではない。2011年から2018年にかけての実質可処分所得の減少率は、年収300万円世帯が8.8%と最も高い。住民税の年少扶養控除の廃止や児童手当の縮減が、分母の年収が少ないぶん大きく響くようだ。