「元バーテン」異色店主のラーメン店が繁盛の必然 培われた細やかなサービス精神が大繁盛店を生んだ

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スイカに塩を振ると甘味が増すような感覚で、ほたてダシに鶏と煮干のダシをうっすらと加えることで、ほたて感が出やすくなるのだという。昆布も、天然ものの質の良い昆布を少ない量ながらしっかりとした出し方で使うことで、唯一無二の昆布水に仕上がる。

及川さんはお歳暮やお中元で届く高級な昆布で試し、今の昆布水を作り上げた。むやみに大量に使えばいいというわけではないのである。夏と冬で昆布を使い分け、その時々でのベストを模索している。

昆布水を使うとつけダレがぬるくなるというデメリットも、ほたての貝ダシを合わせることでメリットに変えている。貝ダシは少し温度が下がることでよりうま味が出やすくなるのだ。

ほたてのカルパッチョ
つけ麺をいただく前にほたてのカルパッチョを食べるという前菜のようなしかけも面白い(筆者撮影)

「ラーメンも“知識”で美味しくできます。食材やうま味について知り尽くすことで美味しさを作れるんです。

食べ方のギミックも昆布に合わせて構成しています。すべて素材の相性を考えて作り上げています。

いっぱい材料を突っ込めばいいというものではなく、適正温度と出し方を知ることで美味しくできるんですよね」(及川店主)

締めのスープ割り
締めのスープ割りは月替わり(筆者撮影)

超人気店なのに、SNSでの発信を積極的にしない理由

締めのスープ割りは月替わりでスープを変えている。これもつけダレ、昆布水と合わせて複合的なうま味が出せるように塩味を調整しながら作り上げている。毎月スープが変わるのでリピーターにもつながりやすい。

できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術
『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』(秀和システム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

これだけ考えられて作られた一杯を提供しているのにもかかわらず、及川さんはそれを自分からはほとんど発信しない。それには理由がある。

「うちはあくまでエンタメ枠で軟派な店でよいと思っています。もちろんこだわりはたくさんありますが、それは謎のままでいいかなと。聞かれれば答えますが、うちはそれよりも楽しく食べていただくことを重視していますので。

オープン時のコンセプト通りにいっている飲食店というのはまず潰れません。私もそういう思いでこのお店を続けています」(及川店主)

及川淳一さん
(筆者撮影)

及川さんはしっかりとした知識と技術でラーメンを作りながらも、「ラーメン屋っぽくないお店」を目指しているのだ。「美味しくて楽しい」をコンセプトにお店を作ったので、初志貫徹で今もその立ち位置を貫いているのである。

前回の記事はこちら:食べログ「都内で9位」ラーメン店主の驚きの過去 秋葉原の超人気店「ほたて日和」はこうして生まれた

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井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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