「がんで死んだウサギ」で知る主人の間違った愛情 「ニンジンが好物」「かよわい」の誤解が招く悲劇

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ぼくのところに病理解剖の依頼で持ち込まれるウサギの遺体の多くは、この子宮がんが死因です。

近年、飼いネコにおける避妊手術の重要性(参照:飼いネコの「胸のしこり」放置で起きていた"悲劇")は、ずいぶん周知されてきました。しかし、“ウサギも長く生きてもらうためには避妊手術をしておくべき“ということは、残念ながらあまり知られていません。

ウサギは、発達した盲腸に共生している腸内細菌の働きで食物繊維を分解して栄養をとっている草食動物です。肉食動物であるネコや、肉食から雑食へ変化したイヌでは効果を発揮する薬でも、消化器の形態や機能が異なるウサギには使えないことが多いのです。

ウサギの病気はまだあまり研究されておらず、ウサギ専用の薬もほとんどありません。そのため、子宮がんを発症してしまった時点で手遅れ、となりがちです。

ただ、子宮がんは若いうちに避妊をしていれば確実に防げる病気です。

「手術はかわいそう」だと感じてしまうかもしれませんが、飼い主さんには健康上のメリットのほうが圧倒的に大きいことを知って、できるだけウサギの避妊手術をしていただきたいと思います。

飼い主さんが知識を持ってしっかりと病気のリスクを減らしてあげれば、ペットのウサギは10年以上生きることもよくあります。

別の意味からも、避妊は大切です。

ウサギは交尾をするとほぼ100%妊娠するうえ、一度の出産で1~10匹の子どもを産む、非常に繁殖力の高い動物です。

過去には、「ペットとして飼われていた2匹のウサギがわずか2年足らずで200匹以上に繁殖。多頭飼育崩壊(ペットの数が増えすぎて、適切な飼育ができなくなった状況)を起こした」というニュースもありました。

これは雌雄で飼っていた場合の話ですが、万が一にも多頭飼育崩壊を起こさないためにも、やはり避妊手術は行うべきでしょう。

さみしくなると死んでしまうのか?

「ウサギはさみしくなると死んでしまう」というのも、昔からまことしやかに語られています。

たしかに、ウサギは本来、群れで暮らしている社会性のある動物ですから、飼い主さんとのコミュニケーションをとる時間が不足すると、それがストレスになるようです。

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