"会社員作家"石田夏穂が描く中間管理職の悲喜劇 体重管理に必死なマッチョ係長が仕事でてんてこまい
もともとはミステリー作家になるのが夢だった。
「サスペンスやミステリーが好きで、高村薫さんの作品をよく読んでいました。大学生のとき、時間があったので自分でも書いてみようかなと、スナイパーやスパイを主人公にした小説を書き始めたんです」
作品ができあがるとミステリーの新人賞に応募してみたが「全然ダメでした」。大学卒業後は一般企業に就職し、出勤前や休日に執筆。作品を仕上げては賞に応募したが、なかなか評価されなかった。
「それで、ちょっとやさぐれた気持ちで、ミステリーではない作品を書いてみたんです」
このときの作品が『その周囲、五十八センチ』。これは太ももにコンプレックスを持つ女性が脂肪吸引を繰り返す小説で、2020年の「大阪女性文芸賞」を受賞した。
「スナイパーやスパイじゃなく、普通の人の話を書いたほうが面白いって言ってもらえるんだ、と思って意外でした(笑)」
新たな気づきを得て、次は筋トレに励む女性会社員を主人公に書き始めた。この作品『我が友、スミス』が2021年に第45回すばる文学賞佳作となりデビュー。デビュー作ながら、第166回芥川賞候補作品にも選ばれ、注目を浴びた。
主人公はマッチョな中間管理職
「小説の中では自分の好きな登場人物になりきれる」。そう話す石田さんが『ミスター・チームリーダー』の主人公として描いたのは「過度に真面目な人」。大手リース会社の係長として奮闘しつつ、プライベートではボディビル大会の出場を控え体重管理に余念がない男性、後藤だ。
「0.1キロとか0.2キロとか、体重がちょっと増減するだけで“キーッ”となっている、ある意味で乙女心のあるようなマッチョな男性を描いたら面白い、と思って」
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