闇バイト描く「3000万」NHKで異色作なぜ誕生? 安達祐実はじめ、キャスティングも絶妙すぎる
犯罪組織の面々に、視聴者にあまり馴染みのない俳優たちを起用していることで、何者かわからない緊張感が増している。とくに、指示役の木原勝利や、かけ子をとりまとめる役の内田健司、学生役の萩原護などに現代性がある。
組織の上役を演じる栗原英雄は、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)で注目された俳優だが、ゴールデンタイムの連続ドラマにしょっちゅう出ているわけではないので、組織の謎めいた雰囲気を出すのに一役買っている。

夫・義光役の青木崇高は、映画『ミッシング』(2024年)ではひたすら妻を支えていた不器用な夫を演じていたが、『3000万』では、音楽以外は器用にできず、妻・祐子の行動力には敵わない人物を絶妙な頼りなさで演じている。
そして安達祐実が、コールセンターでは大人しくクレーマーに謝り続けていたが、いざとなると俄然、強気になって、間違えた方向であろうとも、猛然と突き進んでいくたくましい人物を演じている。『家なき子』のようにお金のない庶民の苦悩とバイタリティを演じさせたら、安達は抜群の魅力を発揮するのだ。
映像も海外ドラマのようにクールで重みがある。
NHKで異色ドラマが生まれたワケ
なぜNHKでこのような異色で濃密なドラマが生まれたのか。
NHKは2年前、海外ドラマのような共同脚本スタイルでドラマを作るための「WDR(Writers' Development Room)プロジェクト」を発足し、メンバーを募集した。
応募総数2025人の中から10人、さらに最終的に4人に絞り、選抜された弥重早希子、名嘉友美、山口智之、松井周の4人の共同脚本体制で『3000万』の脚本が書かれた。
共同脚本といっても1話分を4人で手分けして書いているわけではなく、各話を1人ずつ書いている。そのため、各回、作家の個性が出て競作的な感じもおもしろさの1つである。
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