「膀胱がん余命1年宣告」から開き直りがん共存記 尿が腎臓に逆流、まずは腎機能の回復を最優先

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医師によると、腎瘻造設術といって、背中から腎臓に向けて穴をあけ、カテーテルを留置して尿の流れを確保する措置。手術としてはそう難しいものではなく比較的短時間で終了するという。

ここまで説明を受け、おおよその運命を察知した。そこで医師に聞かなくてはならない質問がある。

「予後はどうですか。生存期間はどのくらいでしょうか」

ひと呼吸置いて医師が宣告した。

「厳しい言い方になりますが、現状はかんばしくないですね。(腎機能回復後に行う抗がん剤治療で)よほど抗がん剤が効けば別ですが、最悪の場合は1年ちょっと、という事態もあり得ますね」

現時点でわかる事実を淡々と伝えられた。包み隠すことなく、余計な同情もいたわりもなく、事実を事実として言及する医師の姿勢に好感を抱いた。この医師なら任せても大丈夫だろう。そんな思いを強くした。

「進行性膀胱がん」「肺とリンパ節に転移」「ステージ4」「余命1年ちょっと」といった言葉が頭から離れない。喫茶店に立ち寄って、コーヒーを飲みながら考えをめぐらす。

医師の言葉を反芻しながら、事実は事実として受け止める。いたずらにあらがっても仕方がない。65年近く生きてこられただけでも十分じゃないか。やり残した仕事もないし、家族も元気だし。こうなったらがんと共存し、マイペースで生きていこう。いつしかそんな思いになっていた。

余命を聞いた家族の反応は?

帰宅後、容態を案じる家族(妻と娘)に、口頭で「進行性膀胱がん」との診断内容だったことを伝え、詳しくはメモを作成して渡すことにした。パソコンで今日1日の流れ、医師の診断内容、余命宣告をもれなく記載して2人に手渡した。2人は紙を受け取り、黙って読み込んだ。

しばらくして妻が「私が毎日拝んでいるから大丈夫よ」と励ましの声をかけてくれ、娘は「症状がわかって対処法が明確になれば、それはそれでいいんじゃない」と現実を受け止めている様子だ。

入院時には2人も同行して医師から詳細を直接聞くという。それでいい。久しぶりに家族との一体感を味わうことができた。さあ、がんとの共存生活がいよいよ始まるぞ。

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