「引きこもりの兄」を実家から追い出せますか 実家の土地・建物を相続した弟、今やるべきは

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「自宅はすでに相談者のものですが、兄は、当面、無償で家を使用することができます。その権利は民法上の『使用貸借権(593条)』となります。しかし使用貸借は返還時期を決めることができるので(597条)、母の死亡時を返還時期(不確定期限)とすれば、相談者は兄に対して、母の死後に明け渡しを求めることができます」

確実に家を出て行ってもらうために、母の存命中にできることはないだろうか。

「公正証書」にする意味は?

「退去期限を明示した使用貸借の契約書を作るべきです。また、この契約を公正証書にしておくと、さらによいでしょう。ただ兄が母の死後、明け渡しを拒否した場合、残念ながら明け渡しは金銭給付ではないので、公正証書に基づく強制執行はできません。裁判や調停などの法的手続が必要です」

では、公正証書にする意味はあるだろうか。

「公正証書にしておけば、公証人が本人確認・意思確認をするので、使用貸借の契約書が偽造文書だとか、錯誤無効、詐欺・強迫による取消などの主張はされにくくなります。

また、公正証書の原本は公証役場に保管されているので、万が一、手元の公正証書を紛失しても大丈夫です。

そして、判決や訴訟上の和解、調停などで明け渡しが決まったのに、それでも兄が居座る場合、裁判所の強制執行手続で強制的に出ていってもらうことになります」

小松弁護士はこのように話していた。

小松 雅彦(こまつ・まさひこ)弁護士
後見・相続・遺言を多数取り扱う。「気軽に相談できる、親しみやすい法律家」をモットーに身の回りの相談にも対応している。薬害エイズ事件やハンセン病国賠事件、薬害肝炎事件なども担当した。
事務所名:多摩オアシス法律事務所

 

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