108歳女性「世界最高齢の理容師」に認定された日 裸眼で90年以上使い続けているハサミを操る

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

手元に、90年以上使い続けているハサミがあります。戦火も一緒にくぐり抜けてきた私の宝物です。眼鏡バサミと呼ばれるハサミで、今のハサミのように小指をかけるための飛び出した部分が付いていないんです。大昔の鋼ですから重たくて、手が疲れますけれど、このハサミじゃないと切れないときがあります。

眼鏡バサミ
戦火も一緒にくぐり抜けてきた宝物のハサミ。90年以上研ぎを重ねてきて、歯の長さが半分ほどに減っている(下)。小指をかけるための飛び出した部分が付いていない、「眼鏡バサミ」と呼ばれるもの(撮影:栗栖誠紀)

右手にハサミ、左手にコームを持ったまま死にたい

108歳の現役理容師おばあちゃん ごきげん暮らしの知恵袋
『108歳の現役理容師おばあちゃん ごきげん暮らしの知恵袋』(宝島社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

研いで研いで、刃がずいぶん擦り減って長さがとても短くなっているんですよ。最初の半分ぐらいしかないでしょう。もう、わたしの分身のような気さえしています。「ああ、このハサミと一緒にやってきたんだなあ」としみじみ思います。ですからね、死ぬときにはこのハサミを握ったまま死ねたら本望です。

「右手にハサミ、左手にコームを持ったまま死にたい」なんて、わたしがそう言いますと、家族も友だちもお客さんもみんな笑います。「冗談でしょう?」なんて言われますけど、わたし、本気でそう思っているんです。

けれど、「ちょっとカッコ良すぎるかな?」という気もして、最近はあまり言わないようにしています。

でも、本当にそうなったら最高ですね。

箱石 シツイ 理容師

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はこいし しつい / Shitsui Hakoishi

1916年(大正5年)生まれの108歳。理容師生活94年。世界最高齢の現役理容師に認定される。12歳で奉公に出て、14歳で上京。理髪店で働きながら理容師資格を取得。22歳で結婚し、東京・下落合に理髪店を開業。2児をもうけるも長女は脳性麻痺に。1944年、夫が軍隊に召集され戦死。実家に疎開の相談に行った夜に空襲で理髪店は焼失。その後、故郷の栃木県那須郡那珂川町に戻り「理容ハコイシ」を開業、70年以上営業を続けている。102歳までひとり暮らしで身の回りのことはすべて自分でこなした。常連のお客さんが来れば今でも店に出る。2021年の東京五輪では息子と二人三脚で聖火ランナーを務めた。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事