新型iPhoneには強烈な武器が仕込まれている 3D Touchをマネすることは容易ではない

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タッチ操作を用いたリモコンはマイクも内蔵しており、日本語にも対応するSiriを使った音声操作が可能だ。かなり柔軟な操作が可能で、好きな役者の名前を使い「○○が出演している最新映画(あるいはテレビ番組)」といった検索や、役名による検索、”今週”、”昨年”といった時系列の言葉なども認識し、iPhoneによるSiriと同様に会話によって好きなコンテンツを探すことが可能となった。内蔵プロセッサはiPhone 6シリーズ同等のA8プロセッサで、全体に応答性が極めて高くなっているのも特徴だ。

アップルはApple TV向けにtvOSというiOSの派生バージョンを定義し、開発者ツールを提供する。開発ツールを用いることで、テレビを使ったショッピングサイトやゲームを開発できる。ゲームをはじめとするアプリからは、モーションセンサーをやタッチパネル、マイクなどの、新型リモコンが持つ機能も利用できる。

ゲーム専用コントローラーの提供については発表会場では言及がなかったものの、サードパーティ向けにコントローラインターフェイスのライセンスを開始するという。

アップルは、カジュアルなゲームユーザーをここに取り込むことができるかもしれない。アップルのGameCenter機能を通じ、同じゲームアプリの進行状況を同期させながら、iPhone、iPad、Apple TVの間で行き来しながらゲームを進めることも可能とのことだ。

任天堂は大きな影響を受ける可能性

PlayStation 3以上、あるいはXbox 360以上のコンソールゲーム機ビジネスには大きな影響は(現時点では)与えないと思われるが、任天堂Wiiなどのカジュアル・ファミリー層を狙ったゲーム機プラットフォームは、新しいApple TVの浸食を許すかもしれない。

ただし、Apple TVは、インターネットによる映像配信サービスが豊富な米国の状況を反映した商品設計となっている。人気スポーツジャンルの競技団体自身が、スコア情報や映像コンテンツをネットで提供している米国に比べると、日本はApple TVの活躍する場は狭い。新Apple TVが日本でどのような位置づけになるかは、10月中とされる製品出荷時を見るまでは判断できないだろう。

また北米でのサービスも、たとえばAT&Tが運営しているDirecTVのインターネット配信チャネルとApple TVの機能を統合するといったアイディアを盛り込んでくるかもしれないと考えていたが、ひとまずは”より良いApple TV”という領域にとどまっている。

噂では音楽コンテンツサービスにおける”Apple Music”のように、新しい映像サービスをアップル自身が提供するのではないか?という話もあるが、映像配信サービス面の大きなアップデートは今回はなかった。

さて、こうしてアップルの発表会を振り返ってみると、昨年の発表会で感じた足踏み感、閉塞感(ビジネスの伸び悩みといよりも、イノベーターのアップルから、現行ビジネスを守る保守的なアップルへの変化)はなく、スマートフォンやタブレット端末といったジャンルで、まだ前進できる余地、可能性を示したという意味で充実したものだった。

iPad Proに関しては新たなチャレンジとなる。一方で、新型iPhoneは明らかに勝ち戦である。ライバルが進化の方向性、切り口を見出せない中で、さらなる足場固めをするのに充分な要素を埋め込むことができたといえるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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