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給食パンの業界は特殊だ。価格や材料、納品まで、とにかく縛りが多いのだ。
まず、「学校へのパンの売り渡し価格をこちらでは決められない」(荻野さん)。
パンの価格は都道府県ごとに設置された「学校給食会」が統一して定めている。例えば、今年度の神奈川県の給食用コッペパン(小麦粉の重さ50グラムの場合)は51.7円。
製造業者によってパンの味や食感に差が出ないよう、原材料やレシピも厳密に定められている。
小麦粉などの主原料は学校給食会が一括購入し、指定した業者に引き渡され、パンに加工される。その「加工賃」が業者に支払われる。パンの価格の約8割が加工賃だ。
各学校へのパンの配送は「自社配送」が求められる。オギノパンが担当していた小中学校は50校強(2022年度)。児童・生徒数の少ない過疎地の学校にもパンを納品に行かなければならない。
「撤退直前は、『宅配便でパンを届けられないか』とまじめに考えていたくらい、収支が切迫していました」(同)
この10年で神奈川県内の指定業者は約25社から13社に減った。
「県内の学校にパンを安定供給できる本当にギリギリのラインです」と、同県平塚市で給食パンを製造する「高久(たかく)製パン」の高久直輝代表取締役社長は訴える。
神奈川県学校給食会もパン業者の苦境を十分認識している。
「最近は(パン1個あたりの)加工賃を年『数円単位』で、かなり上げています」と、同給食会の大石敏靖事務局長兼物資課長は説明する。
しかし、給食のパン代は保護者が支払う「給食費」で賄われており、学校給食会には「安全な給食をできるだけ安価に提供する役割がある」(大石さん)という。
全パン連が求めてきた「製造実態に即した加工賃の値上げ」との間には大きなギャップがあるのが実情だ。全パン連青年部総連盟の給食委員会で委員長も務める高久さんは、こう話す。
「コッペパンであれば、1個80円、90円、100円近い売り渡し価格を実現しなければ、パン業者の廃業や撤退が続く現状は変わらない。ある程度の金額をいただかないと、事業を継続するのは難しい」
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