給食から「揚げパン」が消滅?業者「撤退」の背景 給食費無償化の影響と厳しすぎる「縛り」に悲鳴
福井市では今年4月から市立小中学校への給食パンの供給が停止。10月から再開されたが、それまでの間は米飯給食のみになった。
同市教育委員会などによると、市内の学校を担当していた製パン業者4社のうち2社が「これ以上の負担には耐えられない」「採算が合わない」という理由で撤退したのが原因だという。
三重県大紀町、大分県日田市、沖縄県宮古島市などでも今年に入り同様の事態が発生している。
全日本パン協同組合連合会(全パン連)の鈴木賢市専務理事兼事務局長によると、給食パンの製造業者は、約40年前のピーク時には全国に6000社ほどあった。それが現在は1/3以下に減少している。
これまでは、業者の廃業や撤退があっても、その地域の同業他社がカバーしてきた。だが業者の数が減り、その協力体制も限界にきている。
国は米飯給食を推進
実は半世紀以上前、学校給食の主食といえば、米ではなくパンだった。それが変わり始めたのは1970年代。当時、農林省は「米余り」の解消策として、文部省と連携して米飯給食の普及を推進した。1976年、学校給食に米飯が正式導入。
1985年、文部省は週3回の米飯給食実施を目標に掲げた。目標は2007年に達成されたが、「『日本型食生活』を受け継いでもらう」(農林水産省)という新たな目的が設定され、昨年度は全国平均週3.6回に達した。
一方、給食パンの製造は年々採算が合わなくなってきた。
採算性は企業形態によって異なるが、現在、生き残るのは、家族経営の比較的規模の小さな業者か、給食パンの製造以外に主力事業を持つ業者がほとんどだという。最近は人件費や光熱費が高騰し、製造業者の経営を圧迫する。
神奈川県相模原市に本社工場のある「オギノパン」は昨年3月末で給食パン事業から撤退した。荻野隆介代表取締役は、こう漏らす。
「昔は週に4回パン給食がありましたが、今は週に1回。売り上げは当然4分の1に減ります。でも、製造ラインや配送車、それを動かす人手は維持しなければならない」