給食から「揚げパン」が消滅?業者「撤退」の背景 給食費無償化の影響と厳しすぎる「縛り」に悲鳴
また、単にパンを値上げするだけでは、「学校でのパンの提供回数が減るのは目に見えている」という。
文部科学省によると、昨年度の公立校の給食費の全国平均月額は小学校で4688円、中学校は5367円。1食にかけられる費用はたった250円前後だ。それをさまざまな食材の高騰が圧迫している。
全国の公立小中学校の給食費について、約3割(文科省調査/2023年9月時点)の自治体が無償化しているが、高久さんはこの動きもパン業者の撤退につながると懸念する。
財政が苦しい自治体は「1円でも10銭でも安い給食を作ろうとする可能性がある」(高久さん)。
実際、給食を無償化した自治体がパンの納入を指定業者から毎月の入札に切り替える例もあるという。パンは買いたたかれ、業者はますます苦境にあえぐ。
給食費の仕組みを根本から見直すべき
「給食パン業者の苦境は、保護者が負担する『給食費』の仕組みを根本的に変えないと解消しないでしょう」
こう話すのは、千葉工業大学工学部教育センターの福嶋尚子准教授だ。
給食無償化についても、「単に保護者負担を公費負担に付け替えただけのところが多い。コスト重視で、『よりよい給食を提供する』という意識が欠けている」(福嶋准教授、以下同)と、厳しい目を向ける。
給食費の無償化は、「保護者に対する支援」ではなく、子どもが健全に成長する権利、「成長発達権」に基づいて行われるべきだという。成長発達権は日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」の原則の一つだ。
「市区町村の財政力には大きな差がある。全国の問題ですから、自治体に国が補助金を出して、給食を支える仕組みをつくる必要があると思います」
給食は日本に根づいた文化だ。揚げパン、ソフトめん、わかめごはん、鯨肉(げいにく)の竜田揚げ、冷凍みかん。さまざまなメニューと味わいが、子どものころの思い出と深く結びついている。そんな給食の土台を見直す時期にきている。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)
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