「コオロギパン」社長ブログが正論だけに残念な訳 「社会課題の解決」は簡単に降ろしてはならない

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「食料問題」という言葉を使うからこそ、たとえ正論であっても自分たちのビジネスが「軽く」聞こえてしまうメッセージを発することは避けるべきだったと筆者は指摘します(出所:Pasco未来食コオロギカフェ)

今、コオロギ食に対する反発が高まっている。

昨年11月、今年2月と相次いで、徳島の県立小松島西高校が、徳島大学発のベンチャー企業・グリラスのコオロギパウダーを使った給食を提供した。「Pasco」で知られる製パン大手・敷島製パンも高崎経済大学発のベンチャー企業・FUTURENAUT(フューチャーノート)と共同で、コオロギパウダーを配合した、その名も「Korogi Cafe(コオロギカフェ)」と題したパンを販売した。

このように急速な広がりを見せるコオロギ食だが、先月中旬ごろからネットを中心に拒否反応が広がり始めた。「安全性は本当に大丈夫なのか」「給食で子供たちに出すべきものなのか」「コオロギ食は食料問題の解決に役立つというが疑わしい」といった批判だ。

そんななか、批判に対するコオロギ食を推進するベンチャー企業、そして協業相手の大企業の広報対応にも、小さくない問題点が見出された。私は記者として、あるいは現在はPR戦略コンサルタントとして、長くベンチャー企業の広報PRに携わってきたが、彼らが今回の騒動に際して発したメッセージは、残念ながら非常に「軽い」と言わざるを得ないものだったからだ。

推進側が「コオロギ食は必要」と訴える3つの理由

なぜ、コオロギ食がここまで注目されるようになったのか。改めて、経緯を振り返っておきたい。コオロギ食の必要性については、「コオロギチョコ」や「コオロギせんべい」を販売している無印良品の特集サイトによくまとまっている。

サイトによると、「コオロギ食が必要な理由」は以下の3点だ。

ひとつは「人口増加に伴う食糧確保の必要性」だ。2050年には世界の人口が100億人に達するという。家畜の飼育が追いつかなくなったときに、昆虫食が貴重なたんぱく源になるという。

もうひとつは「たんぱく質摂取の効率が高いこと」。コオロギは鶏や豚、牛と比べて、3倍近くのたんぱく質を含んでいるとのこと。

最後は「環境への負荷が少ないこと」だ。昆虫を生育する際の温室効果ガス排出量、そして必要な水やエサの量は一般的な家畜と比べて圧倒的に少ない。それゆえ、環境負荷も軽減されるというのだ。

「未来の食料問題解決の切り札」として、いくつものベンチャー企業や大企業がコオロギに飛びついた。テレビや新聞などのメディアも、SDGsの文脈で好意的に報じた。そして、政治家や芸能人もコオロギを口にする様子をSNSで発信するまでになった。こうしたコオロギ食の広がりに、今、反発が強まっているのだ。

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