まず、AI教習の基本的な部分を説明すると、システムは高度で複雑だが、実技に使用する車両は一般的な教習車がベースだ。この車両に自車周囲360度の情報を取得する「LiDARセンサー」、進行方向を記録する「光学式カメラ」(別にドライブレコーダーを装着)、ドライバーの顔を認識するための「ドライバーモニター用光学式カメラ」、そして車両が障害物に接触しそうになると機能する「簡易的な衝突被害軽減ブレーキ」(自動車メーカーが実装する衝突被害軽減ブレーキとは別)が備わる。もちろん教習車なので、助手席足元には指導員操作用のアクセルとブレーキの両ペダルが付いている。
もっとも気になる「AI」の部分だが、AI教習車両では、ドライバーモニター用光学式カメラの映像分析にAIを使用。具体的には、ドライバーの顔向きを正確に認識・判断するためのアルゴリズムにAIが活用されている。AIが運転操作を行ったり、教えたりするわけではないが、目視によるドライバーの安全確認は安全運転の一丁目一番地であることから、顔向きの判断にAIを活用することは理にかなっている。
実際、自動車メーカーが実装する先進安全技術ではドライバーの顔向きだけでなく視線を送った時間までもドライバーモニター用の赤外線カメラで判断している。たとえばトヨタ/レクサスの一部のモデルでは「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(前方車両などを検知しブレーキ/アクセルの操作をサポートしてくれる機能)と「車線中央維持機能」(車線や白線などを読み取り車線の中央を維持をサポートしてくれる機能)稼働時に使用可能な、自動車線変更のトリガーとして、車線変更する側にドライバーによる目視での安全確認が使われている(R79 /ACSF/カテゴリーD 自動操舵等に係る国際基準)。
トヨタ/レクサスの同機能は、夜間や暗い車内で判断する必要があるため赤外線カメラが必須だが、AI教習システムでは昼間の時間帯を想定しているため、現時点では光学式カメラで十分な機能を果たす。
AI教習システムを体験する
さっそくAI教習車両に乗り込む。画面に従って操作するとドライバーは教習IDで認識される。その後、コースを選択し発進する。今回は場内(教習所内)での運転操作に対する「みきわめコース」を体験した。
筆者が体験したみきわめコースはドライバー(筆者)一人が乗車して行う。いわゆる無線教習と同じ環境だが、今回は体験取材のため助手席に、AI教習所の等々力指導員に乗車していただく。
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