「褒める・叱る」子どもの未来を育むバランスの妙 子どもにとって最もよくないこと・辛いことは

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子どもにしてみれば、それはダブルバインド(言葉に出しているメッセージと裏にあるメッセージの間に矛盾がある二重拘束状態)に感じます。親はたいして意識せずにやっていることでも、子どもはそうした矛盾を敏感に感じ取って不信感を抱くため、賢明な教育とは思えません。

また、私から見れば、日本の親には過剰に恐れ過ぎている人が多いと思っています。

親自身が周りに嫌われたくないとか、世間から浮きたくないとか、親の教育が悪いと思われたくないなど、いろいろなことを先回りして不安に感じてしまう人が少なくありません。

子どもの好きにさせてあげてもいい

たとえば日本の社会では、小さな子どもが電車内で大声を出したり、幼稚園や保育園で先生の言うことをおとなしく聞けなかったり、列にきちんと並べないことなどを問題視して、「親のしつけがなっていない」と言われますし、親たちも非常に気にしています。

しかし、小さな子どもが決められたルールに従えないだけで「悪い子だ」と責めて子どもを否定するという発想はやめた方がいいと思います。

そもそも、日本の大人たちは「周りのルールに合わせて行動するのが正しい」とか「目上の言うことが絶対に正しい」という「常識」を疑うことがありませんが、ひょっとしたら、そうやって従順に周りに合わせてきた結果が、今の「失われた30年」につながっているのかもしれないとも思うのです。

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それはともかくとして、子どもは小学校に入ればどうしても細かいルールに従わざるを得ないわけですから、それまではもう少し子どもの好きにさせてあげてもいいと思っています。

そして子どもにとって最もよくないのは、親から褒められることもなく、叱られることもないことです。

子どもにとっては、良くないことをした時に叱られることよりも、親に気にかけてもらえない、相手にされないほど辛いことはありません。

ですから、幼児期の子どもに対しては基本的には愛情を持って大らかに見守るという姿勢で過ごしながら、子どもが本当に悪いことをした時にはきちんと叱り、何がよくないのかを教えてあげることが大事です。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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