24歳「現役アイドル✕気象予報士」大胆挑戦の裏側 椿野ゆうこさん物語(前編)

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2020年、大学に入学してすぐに、現在所属する「ひめもすオーケストラ」のオーディションを受け合格。晴れてアイドルとなる。

だが、世は折しもコロナ禍真っただ中。

キラキラとして憧れていたステージとは程遠い無観客ライブでのアイドルデビューとなり、有観客でのデビューは少し先となる。

その分、ファンの前でのステージデビューの感激はひとしおだった。

「ステージに立ってみて『アイドルはこんなに楽しいんだ!』って思いました。ペンライトを振ってくれるファンの方もいて感激しました」

これまで「憧れ」として見ていたアイドルに自らがなり、ステージに立った。アイドルとしての活動が本格的にスタートを切る。

同時に大学生としての生活も慌ただしくなる。

「ライブやレッスンのために茨城と東京を往復していました。授業も課題などで忙しくて大変でしたね。1年生のころにはじめて気象予報士の試験を受けたのですが、本当に難しくてかないませんでした」

「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」は本当に面白い

こと理系となれば、必修科目を終えれば専門的な研究が待っている。

「大学ではエルニーニョ現象、ラニーニャ現象を研究していました。やっぱり気温の差ってほんと面白いんですよね。みんなにも、もっとこの面白さわかってもらいたいな~(笑)」

ちなみに「エルニーニョ現象」とは気象庁による解説では、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象は「ラニーニャ現象」となっている。

椿野の卒業論文は、これが研究テーマだった。

そうして、アイドルをしながら学業との文武両道で、気象予報士試験の合格を目指すことになる。

これには、椿野の夢と同時にしたたかさも垣間見えた。

アイドルとして個性を出して売れるために何が必要かと考えたときに、『今、現役(アイドル)で気象予報士になっている人はいない』と思ったんです。アイドルを卒業されてからなった人はいても、現役はいないなと思って。それで、なおさら合格しようって頑張りました」

群雄割拠を極めるアイドル界において「個性」「差別化」は必須要素だ。

しかし、その差別化で「気象予報士となる」というのは、ほとんどのアイドルには真似できないことだろう。なお、アイドルとしては当時、AKB48に所属していた武藤十夢さんが2019年に気象予報士試験に合格している。

有言実行。2024年、椿野は気象予報士試験に合格。見事、現役アイドルにして気象予報士となったわけである。

ただその根底にはずっと幼いころから抱いていた天気に関する興味があり、そして高校の頃に救われたアイドルへの憧れが重なった結果であろう。

気温差の面白さを語ってくれた椿野だが、我々はアイドルと気象予報士の緩急をこれから存分に楽しませてもらえることになる。

*この記事の続き:「"自死遺族"の苦しみ」24歳アイドル、告白の真相

今は気象予報キャスターとして研修を積み日々表現の勉強をしている(写真:今井康一)
松原 大輔 編集者・ライター

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まつばら・だいすけ / Daisuke Matsubara

富山県出身。編集者・ライター・YouTubeプロデューサー。中央大学法学部卒。在学中より故・永谷修氏に師事。大学卒業後、講談社生活文化局にて編集見習いとなる。その後、文藝春秋『Sports Graphic Number』編集部などで編集者・記者を経て、2018年に独立。書籍の企画、編集や執筆活動、YouTubeの動画制作・プロデュース、アーティストマネジメントなどを行っている。

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