保有する知的財産を洗い出し、有効活用の方法を探れ
「われわれ科学者というものは、自分の研究が何の役に立つか、とは考えない。真理は何かというところにしか関心がない」。大手企業研究者の言葉だ。この考え方は、学問の追究者としては正しい。
だが、研究費の不足から、大学というアカデミックな研究機関ですら「収益性」を要求される現在では、ことはそう単純には割り切れない。まして、景気低迷が続く中、企業経営者にとって、研究者の自由度の高さは、大きなリスクを伴う。
2003年、ヘンリー・チェスブロウが提唱する「オープンイノベーション」が日本にも伝えられた。以来、富士通やNECなどエレクトロニクスや医薬・化学品関連企業を中心に、日本企業にも徐々に受け入れられるようになっている。だが、企業にとって、相変わらず、研究所と研究者の統制は頭の痛い問題だ。
「社業の役に立つかどうかではなく、自分の興味のあることにしか関心を示さない研究者をどうすればいいのか」と、ある大手化学品メーカー企画担当者は頭を抱える。
自社の製品に生かすことが難しく、収益化が見込めない研究開発の費用がかさみ、コア事業の研究開発に十分な資金が回らないことすら起きているという。研究開発テーマの整理と統括は、経済成長が見込めない中では、企業の収益力を制する重要課題と言っても過言ではない。
研究開発は全体戦略の中で
「研究所の統制が難しいと嘆く企業は、本部と事業部間、事業部と研究部門間のガバナンスができていないのかもしれない」と、西尾好司・富士通総研経済研究所主任研究員は指摘する。プレゼンテーションのうまい研究者に乗せられて大量の資金をつぎ込んだものの、待てど暮らせど成果が上がらず、やきもきする経営者は多い。