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北朝鮮軍のロシアへの派兵は確実に始まっている 派兵実現を急いだロシア・北朝鮮の本気度

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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ロシアが北朝鮮側に対し、派兵を要請したのには、直接の契機があった。2024年8月6日のウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃だ。不意を突かれたロシア軍は対応に手間取り、空挺部隊などの主力を投入できたのは約1カ月後だった。

こうした苦しい事情を受け、プーチン政権は北朝鮮に派兵を緊急要請したのだ。北朝鮮部隊はわずか約1カ月後に派兵してきた。いかに両国軍部の間で準備ができていたかを示すスピードだ。本稿執筆時点で、クルスク州の占領はすでに3カ月が過ぎ、ロシア軍は奪還のメドが立っていないのが実情だ。

クルスクでの任務

このため当面、派兵部隊はクルスクで任務に当たるとみられる。その限りにおいては、派兵部隊は形のうえではロシア領防衛に当たる形になる。プーチン氏は、2024年10月半ば、上記の首脳会談で金総書記と署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」を批准手続きのため下院に提出した。この条約は、秘密規定も含め、有事の際の軍事相互支援を規定している。

つまり、批准さえ済めば、今後ウクライナ侵攻で派兵部隊がクルスク州でロシア軍と合同作戦を展開しても、これは同条約に沿った領土防衛行動で、違法ではないと主張する構えなのだろう。

同時に、ロシア軍は極東の軍訓練施設で北朝鮮部隊に対し、ロシアのパスポートを配った。これは参戦した北朝鮮軍兵士が今後ウクライナ領内で死亡した場合、ロシア軍兵士であると偽りの主張をし、ウクライナへの侵攻でロシアと北朝鮮軍がともに戦っているとの国際的批判をかわす思惑とみられる。

また今回の派兵には、兵力不足にあえぐロシア軍を北朝鮮軍が支援するという構図以外に、別の注目すべき構図がある。金総書記がロシアからの要請を受けた背後には、派兵を北朝鮮軍の戦闘能力を高めるための実戦訓練の場とするとの狙いがあるのだ。朝鮮戦争以降、北朝鮮軍は大規模戦争の経験がない。統合作戦やハイブリッド作戦といった近代戦のやり方を知らないといわれる。

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