北朝鮮軍「ウクライナ派兵」情報・真偽の見極め方 「可能性高まるが派兵しない可能性も」専門家指摘

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まず、ロシアの立場からみてみましょう。北朝鮮軍をウクライナ戦争に派遣するということは、とてもよいアイデアです。ロシア国民に戦争を意識させない、すなわち「戦争が行われている」ことを実感させないようにできます。

現段階で、ロシアの国民の大部分は戦争を支持し、反対はしていません。しかし、プーチン大統領が再び動員令を発令すれば、2022年冬の時のように若者を中心に反政府感情が高まり、海外へ逃げる人たちも増えるでしょう。

また、金を受け取ってでも戦場に行こうと思う人たちを動員することが、このままではますます難しくなります。そのため、北朝鮮軍兵士を使うということは、ロシア軍の兵力枯渇という状況を解決するための方法となります。

外貨稼ぎ、技術移転狙う北朝鮮

――北朝鮮とロシアは2024年に首脳会談を行うなど、関係を深めていますね。

北朝鮮の立場からみてみましょう。北朝鮮には、軍隊を送る理由も送らない理由もあります。

北朝鮮が派兵すれば、金を稼ぐことができます。現在、ロシア国籍の兵士の月給は約2000ドル程度です。入隊する際に1万ドルから2万ドルのボーナスも支給されます。

北朝鮮兵士にはこの金額の半分、あるいは3分の1が支給されるとしても、彼らにとっては大金です。もちろん、彼らが受け取る額の半分以上は国家に献納されます。派兵は兵士にとっても国家にとっても金を稼ぐ方法になります。

アンドレイ・ランコフ/1963年、旧ソ連・レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ。レニングラード国立大学を卒業後、同大学院の博士課程を修了。金日成総合大学に留学した経験もある。母校やオーストラリア国立大学などで教鞭をとった後、現職。著書に、『平壌の我慢強い庶民たち』『スターリンから金日成へ』『民衆の北朝鮮』『北朝鮮の核心』など邦訳も多数(写真・ランコフ氏提供)

――北朝鮮製の兵器を送る、あるいはロシアから軍事技術を移転する可能性も取り沙汰されています。

そうですね。軍事技術の移転という問題もあります。ロシアは北朝鮮に軍事技術の移転を行っているようです。しかし、ロシアが移転したくない技術も当然あります。北朝鮮はロシアの兵力不足を解決してあげる代価として、ロシアが本当は移転したくない技術、あるいは北朝鮮にとって必要だがなく、ロシアが持っている技術を受け取る可能性もあります。

また、軍事的経験を得るということも重要でしょう。軍隊にとって実戦経験というのは貴重な財産です。北朝鮮の金正恩総書記は人民軍部隊をウクライナの戦場に送るとすれば、その貴重な経験を得られます。

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